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目黒「先に行てろって言ったのに、陽菜」
目黒さんが、幼い母上にそう言った。
母上の名は朱雛院陽菜。父上が当主の朱雛院家に安倍の分家である東郷家から嫁いできたのが母上だ。
陽菜「、、蓮、ごめんなさい、わたし、ここから出られない。」
目黒「、は？何言ってんの、早く、」
目黒さんが手を引っ張り、森の中へ入ろうとするけど、母上の、陽菜の体は弾かれてしまう。
陽菜「やっぱり、、」
目黒「なんだこれ、結界？、」
陽菜「そう。安倍家の人間は全員、独り立ちするまではここから出られない。産まれてすぐ、呪印を刻まれる。」
目黒「でも、、じゃあ、どうすれば、、」
陽菜「行って、わたしはここに残る」
目黒「ダメだ。絶対連れて行く。お前をここに置いて行くなんて、」
陽菜「いいの。わたしはもう嫁ぐ事も決まってるし、破談になったら朱雛院家に迷惑がかかる。それに、」
そこまで言うと、ギシギシと何かが軋むような音が聞こえる。真上にある見張り台が音を立てて倒れる。
『危ないっ！！』
灰と土埃の中、目黒さんが陽菜を抱き抱えていた。二人とも無事みたいだ。
陽菜「、、やっぱり、妖憑きになったんだ。」
目黒「、、あぁ、」
バツが悪そうに返事をする目黒さんの額には角が生えていて、異様な霊力が身体を包んでいた。目黒さんが陽菜を下ろして、目線を合わせるように膝を立てて座る。
陽菜「わたしね、ここに残ってできることをやるよ。陰陽師を変えるの。」
目黒「そんなの無理だ、。安倍家がいる以上、」
陽菜「でも、朱雛院家は違う。朱雛院家だけは、貴方たちを蔑まなかった。ずっと支援をしていたのも、安倍家じゃなくて朱雛院の計らいなの。」
目黒「、、なんでそんなこと、」
陽菜「貴方達が、謀反人ではなくて、救世主だと信じているからよ。だからわたしも、朱雛院に嫁ぐと決めたの。」
目黒「お前、、」
陽菜「大丈夫だよ。心配しないで。」
目黒「残っても、、俺たちに関わりがあるってバレたら、、」
陽菜「大丈夫だって、朱雛院家が守ってくれる。でも、心配なのは、10年後くらいかな。」
目黒「え、」
陽菜「朱雛院家に女子の世継ぎが産まれたら、必ず朧に向かわせる。」
目黒「おい、なんの話を、」
陽菜「聞いて。東郷は昔妖に受けた呪いで世継ぎは女しか産めない。逆に朱雛院は女が産まれない。東郷の後継はもうわたしだけ。家名を捨ててまで朱雛院に嫁ぐよう安倍家言われた。
安倍家の狙いは、朱雛院家の血を引く女の子を産ませること。」
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作者名：スヒョン
| 作成日時：2024年3月2日 22時
