「神子」 ページ14
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炎にのまれる街の中を突っ切って行く。
火にも障害物にも当たることはないし、熱を感じることもない。魂だけがここにいるみたいだった。
駆け足で知詠に手を引っ張られながら、前から後ろへとものすごい速さで景色が流れて行く。
『知詠、あなたがわたしに干渉できたってことは、呪いが弱まってるってこと?』
知詠は振り向かずに頷いた。
知詠「術者の力が弱まれば、術も弱まる。」
『じゅあ、、母上は、まだ、』
知詠「生きてると思う。でも、ただ、生かされてるだけかもしれない。意味は分かるでしょ。」
『でも、術が解けない間は、まだ生きてる、。』
知詠「そうね。でも、」
『え?』
知詠「わたしが、あいつらなら、すぐに術を解かせて、Aを見つけ出そうとする。そうしないのには、理由があるからよ。」
『理由って?』
知詠「さぁ、それは、いくらでも想像できる。朧に来ていることをすでに知っていて、場所を特定するために泳がせているとか、母親を案じたAが自ら陰陽院に戻ると踏んでるのか、」
『、、そうね、』
知詠「でも、確実に呪いは弱まって、Aとかぐや様、かぐや様と妖、Aと妖憑きとの繋がりが強く、濃くなってる。」
『繋がりって、?』
知詠「上手く言えないけど、、。ほら、今朝、白龍と鬼が、」
『目黒さんと真都さん?、あ、、今朝の、寝床の、』
知詠「人間の意識としてではなくて妖同士の繋がりが寝ている間に表に出たのね。」
『そうだったんだ、、』
知詠「安心して、Aを守るために側に控えてるだけだから、」
『え、っなに、分かってる、』
知詠「ふふっ、」
よく考えれば、知詠は見た目は幼いけれど、わたしよりずっと大人のはずなのだ。
知詠「着いたよ、ほら、」
「西」と書いてある森の入り口に、一人の女性が立っている。若い、というか幼い。十もいかない女の子だ。
女性だと思ってしまったのは、母上の面影があったからだ。
『母上だ、』
顔中煤だらけで、着物も古く汚れている。
いつも綺麗にしていた母上から幼い頃の話を聞くことはなかったけれど、一体どんな生活をして、どうやって父上と出会ったのか、分からない。
するとそこにやってきたのは、雪乃屋の九人と、向井さんの側近である忍びの人達。
阿部さんは男の子を連れ、深澤さんは女性を抱えていた。
目黒「先に行てろって言ったのに、陽菜」
目黒さんが、幼い母上にそう言った。
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作者名:スヒョン | 作成日時:2024年3月2日 22時