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知詠「朧も、陰陽道も。現世と隠世の均衡が崩れて、現世が何十年も災厄に見舞われるかもしれない。そうなれば、誰一人として、生き残らない。
それを元に戻せるのは、Aとにぃに達しかいない。だから、わたしはそこに導くの。
これが、かぐや様から与えられた、わたしの役目だから。」
『待って、話が大きすぎて分からないよ。現世って、この人間界の事でしょ?それが、だから、』
言葉でどう表現したら良いのか分からず口籠ると、知詠は立ち上がって言った。
知詠「滅ぶって事。みんな死ぬの。」
『滅ぶ、、』
知詠「原因は陰陽師よ。何十年、何百年と、妖や物の怪を虐げて来た罰が降るの。妖あっての土地だというのに、自分達の力だけを誇示したいがために、今も妖の命を奪い続けてる。天界の神々達が、その責任を全ての人間で償わせるつもりで、すでに動き始めてる。」
知詠は家から出ると天を仰ぎながら言葉を続ける。
知詠「唯一、止めることのできるのは、妖でもあり、人間でもあり、神でもある、かぐや様が憑いた巫女の血を引く女の子。
それを、見つけて夢の中で導くのが、私の役目。
でも、人の夢の中っていうのは、魂しか介入できない。だから、わたしはあの時、死ぬべきだった。これで正解なの。」
『かぐやが、、貴方をここに?』
知詠「そうよ、わたしは」
『許せない、』
知詠「、、え?」
『だって、ずっと、ここにいるんでしょ?一人で。何十年も。』
知詠「、、、それが、知詠の役目だから。」
『それでもっ!こんなの、、残酷過ぎる、』
自分が死ぬあの日を。
大好きな家族と、大介さんと永遠に会えなくなるあの日を、街の惨劇を、何度も何度も繰り返して。それがいくら役目だと言っても、こんなに残酷な事はない。
私だったら、きっととっくに気が狂ってしまっている。
わたしが、陰陽堂から逃げ出したあの日を何回も繰り返し体験することになったらと考えたら、とてもじゃないけど無理だ。
知詠「でも、、これは、かぐや様のため、にぃに達のためだから、」
『けれど、、辛かったでしょう?一人で。』
知詠「、、辛かった、、?」
呆気に取られたように、大きな目を見開いてこちらを見ていた知詠は、何かを思い出したように小さく息を吸うと、眉を歪めて、大粒の涙を流した。
言葉にならない感情がどんどん溢れてきて、声を張り上げて泣いていた。見た目と同じ、年相応な泣き方だった。
わたしは、知詠をそっと抱きしめた。
『ごめんね。ずっと一人で、怖かったよね。寂しかったよね。こめんねっ、。』
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作者名:スヒョン | 作成日時:2024年3月2日 22時