IDOL_3 (ページ7)

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『You side』

ライブ配信が終わり、スタッフさんに御礼を言うと滝沢さんと別れてまたレッスン室に入った。
動画のコメントは賛否両論。と言いたいところだけど、圧倒的に否定的な意見が多い。
そう簡単に受け入れてもらえないのは分かっている。だから自分で制約を課したのだから。

YouTubeの検索マークを押して、「仮面舞踏会」と打ち出した。

私にとっては苦手なジャズ。アクロバットはまだ出来ない。一回見て、だいたい頭に入った振りを踊り始める。

ダンスをしている時、特に、振りを覚えるこの時間は、余計なことは考えなくても良い。次のフリを頭の中で準備して鏡に写っている自分がそれを踊っている。
強制的に頭がリセットされる。

でも今日は違った。
後半のダンスパートに入って、鏡の中のわたしはぴたりと動きを止めた。

『なんだっけ、』

まぁ、一回しか見てないから、とスマホで確認しようとするけど、なんだか今日はそれ以上頭に入らない気がして、外の空気でも吸いに行こうと思い立つ。

レッスン室のドアに手をかけて思い切り引くと、「わっ」という声が聞こえた途端何かが倒れて来て、押される様にその場に尻もちをついた。

『いったぁ、、』

ラウール「ごめん！大丈夫？！」

目の前にラウールくんの顔があって、大きな目をこちらに向けながら眉毛を下げて、慌てた様子でそう言った。

目黒「ラウール、まずどいてあげな」

部屋の外から顔を覗かせた目黒さんがラウールくんに向かって言った。

ラウールくんは「あ、ごめんね」と私の前から少し離れた。

ラウール「立てる？」

手を伸ばしてくれたラウールの手を取ろうとして、寸前で止める。

ラウール「？」

親切でしてくれているのは分かっているしありがたいけど、こう言うのに慣れてしまうと、後々後悔する。と出しかけた手を引っ込めた。
できるだけ、距離を取るべきだ。

『ありがとう、大丈夫。』

自分ですっと立ってラウールくんにそういうと、出した手をグッと握って下ろした。
後ろで見ていた目黒さんが小さくため息をついたのが見える。ラウールくんはぐっと唇を噛んで目を伏せた。

あ、傷つけてしまったかもしれない。ラウールくんなりの優しさだったのに、自分の都合で拒んでしまった。

部屋の中に気まずい空気が流れた。けど、ラウールくんが私の右手を左手で掴んで、握手をする様に右手を合わせてぎゅっと握った。

『えっ、』

ラウール「次からは、引っ込めないで。」