「紅一点」 ページ5
ー
『ラウールside』
SNSで見た「紅一点」という言葉の意味を、ネットで調べた。
多くの同じ様なものの中で、一つだけ異彩を放つもの。
特に男性ばかりの中で一人だけ女性がいること。
草むらに咲くザクロを見て、昔の人がそう例えたらしい。
まさに、椎名さんはジャニーズという男所帯の中でただ一人の女の子で、その色は明らかに違っていた。でも、今はまだ誰もそれを良い意味では捉えていない。
みんながチラホラとタクシーで帰る中、めめには一人で帰るからと伝えて、椎名さんがいるレッスン室へ向かった。メンバーにはああ言われたから、なんだか気が引けるけど、どうしても他人事とは思えなかった。
部屋の前まで来ると、音楽が聞こえてくる。それもジャニーズの校歌とも言える「仮面舞踏会」だった。
扉にある小さな窓に近づいて覗いてみると、椎名さんがスマホを見ながら小さく踊っているのが見えた。
ジャニーズの曲を踊っているのを初めて見た。
曲が終わってもう一度曲が流れ始めると、椎名さんは地面にスマホを置いて、鏡を見て踊り始める。ほぼ完璧に踊れていて、思わず魅入ってしまった。
目黒「ラウール」
後ろから声がして、肩をびくつかせて後ろを振り向くとめめが立っていた。
目黒「やっぱり、ここだと思った。」
ラウール「ごめんなさい。どうしても、気になって、。」
めめは怒るどころか、「だよなぁ」と言って廊下の壁に背を預けた。
目黒「言ってたもんな。ダンスを嫌いになりそうな時に、AKIRAのダンス動画に励まされたって。」
ラウール「、、うん。」
ジャニーズに入って、中々前に出られなくて落ち込んでいた時、スタジオにこもって練習して、家に帰ってガラス戸を鏡がわりにして練習していた。
それでも、前で踊る機会なんてほとんどなかった。
あんなに好きだったダンスを嫌いになりかけていた時、ダンススタジオに通っていた時の友達に勧められて見た動画がAKIRAだった。
髪は今よりも全然短くて、最初男の子かと思って見てた。力強いダンスと幅広い表現力。画面越しでこれだけ伝わるなら、生で見たらどうなるんだろうと思った。
画面の中のAKIRAという子は、心からダンスを楽しんで、体全身で音楽を楽しんでいて、「あ、これが僕のやりたかったことだ」って、再確認した。
誰何を言われても、自分のスタイルや表現を曲げなくても良いんだと思えた。
ラウール「AKIRAのお陰で、僕は、ダンスを嫌いにならなくて済んだんだ、」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 624人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：スヒョン
| 作成日時：2024年1月16日 23時
