IDOL_3 (ページ27)

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『岩本side』

自分が一番辛い立場なのに、AKIRAは「ごめんなさい」と連呼した。
山崎さんから聞いた話、かなり怖い目に遭ったはずだ。かなり追い込まれていたはずだ。なのに、弱音を吐くわけでもなく、「ごめんなさい」と言い続けた。

岩本「AKIRA、謝んなくていいから。俺らが勝手に心配してるだけ。」

『っなんで、』

正直言って、AKIRAじゃなかったらここまで心配してない。

俺にとっては、AKIRAは憧れの対象の一つだった。

YouTubeに、謎のダンサーが現れて日本よりも早く海外で話題になっていた時、初めて目にしたAKIRAのダンスに画面越しに鳥肌が立ったのを今でも覚えている。
過去の動画も見返して、更新されればすぐに見た。何回も見た。
パフォーマンスだけで、大勢の人を魅了しているAKIRAがすげぇかっこいいと思った。

前に、撮影していた公園がバレて、目撃者が高校生くらいの女性だって、Twitterかなんかで呟いた事があって、当時は結構な話題になっていた。

ガセだと思ってた。どっかのプロダンサーが、顔を隠して活動してるのとさえ思っていたぐらいだから。

まさか、その人が、目の前に現れるなんて、想像つかなかった。

その子が一人で苦しんでんのに、放っておけって言う方が無理ある。
ラウールにはああ言ったけど、俺はただ、ジャニーズにいる事が、俺たちといる事が、彼女の、AKIRAの足を引っ張ってしまうんじゃないかと、思っていたから。

俺らだけじゃない、ダンスの世界にいる人間なら、AKIRAの存在が、脅威で、未知で、それでもどうしようもなく、魅せられてしまうのだ。

でも、それは椎名Aが、AKIRAのために作ったイメージだと、ここで初めて痛感する。
AKIRAという役を画面の中で演じ続けていたんだ。
本人が、まだ15歳の、等身大の、まっすぐで脆くて、ただ舞台に立ってパフォーマンスをしたいと言うどこまでも貪欲な女の子だとは知らずに。

阿部「椎名さん、これ見て、」

阿部は自分のスマホの画面を見せた。
そこには、AKIRAのカムバックを喜ぶ声がたくさん、たくさん寄せられていて、今回の事件の影響かもしれないけど、それでも、大勢のファンが、待っていたんだ。

佐久間「ちゃんといるでしょ？愛してくれる人。」

『っはい、。』

初めてだった。泣くのを見るのは。
逆に、今までどうやって耐えていたんだろうか。

一晩で、AKIRAの、いや、

椎名Aのチャンネル登録者数は100万人を超えた。