IDOL_3 (ページ3)

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『阿部 side』

この子は、幾つ顔を持っているんだろうか。

オーディションに来た時、
ダンス審査の時、
歌の審査の時、
芝居してる時、
レッスンしている時、
そして今。また彼女の違う一面を、俺たちは見ている。

そこには、ジャニーズ事務所のオーディションに受かったけど、アンチにさらされて5人が脱退し、1人残ってしまった女の子ではなく、自分の意思でジャニーズ事務所を選び、敢えて厳しく険しい道を歩もうとするアイドルの姿だった。

『悲劇のヒロインになるつもりはない』と、一見強がりにも聞こえたその言葉の意味が分かった気がした。

目黒「あの、これ、事務所から提示したんじゃないです、多分。」

終わった生配信のコメントを見ていたメンバーに、目黒が気まずそうに言った。メンバーが手を止めて目黒の方を見ると、小さく息を吸って目を泳がせるて、俺たちに向かって話し出す。

目黒「滝沢さんと、東山さんに、さっきの、約束、？」

阿部「制約？」

目黒「そう、それ、を、言ってたんです。AKIRAが。
俺、配信前に聞いちゃって、。」

佐久間「え？じゃあこれ、本人が決めたってこと？」

深澤「自分からこんな縛りかけるなんて、」

渡辺「やりにくくなるだけじゃないの？」

もちろん、本人からしたらそうなんだろうけど。

阿部「俺たちの、って言うか。事務所や所属タレントとそのファンのためでしょ。きっと。」

宮舘「このぐらい厳しくないとって、ことなのか。」

岩本「それでも、疑う奴はいるんだろうな。プライベートなことなら尚更、見えねぇもん。何が、どう言う経緯で、そうなったのか、本人たちにしかわかんねぇからさ、何事も。」

向井「でも、うちの事務所って、先輩の作品とかに出させてもらって経験積むやん？そこらへん、どうするんやろ。」

渡辺「普通にオーディションとか受けんじゃない？」

向井「それはそうなんやけども、作品の制作の人からしたら、、、」

佐久間「うん、俺だったら、どんなに実力があっても、出さないかも。AKIRAを知らなかったら尚更。」

宮舘「ジャニーズ事務所のファンを敵に回すってことだからね。」

ラウール「、、、もう、終わったかな、」

目黒「ラウール」

立ち上がったラウールを目黒と涼太と照が止めて、ふっかもなにか言いた気だった。
照が首を横に張る。「会いに行くな」と言うことだ。

ラウールはドアの方を見てから目を伏せると、その場に静かに座った。