IDOL_3 (ページ20)

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『佐久間side』

佐久間「あ、やべ、時間だ。俺これから稽古なんだ。」

勢いよく立つと、AKIRAも俺合わせて立ち上がった。

佐久間「ごめんね、あんま参考にならなかったかも。」

『いえ、そんなことないです。ありがとうございます。』

深々と頭を下げるAKIRA。
ちゃんとしてる子なんだなと思った。

岩本「あれ、佐久間何してんの。」

休憩室に照が入ってきて、俺とAKIRAを交互に見てそう言った。

佐久間「ちょっとお話ー。飲み物買いに来たの？」

岩本「おん」

照はAKIRAに「おはよう」と挨拶をすると、AKIRAは「おつ、、おはようございます」と頭を下げる。
あら、適当に「お疲れ様ですって言っとけばいい」なんて言っちゃった、と少し反省。

岩本「もうみんな来る」

佐久間「おけ、もう行くわ」

岩本「AKIRAは？自主練？」

『はい』

岩本「そっか、。あんま根詰めすぎんなよ」

『はい。ありがとうございます。』

AKIRAに手を振って部屋を出る。

佐久間「笑わなかったなぁ。一度も。」

岩本「え？」

佐久間「いや、佐久間さんはどうやって笑ってるんですかー？って聞かれて、自分なりにアドバイスしたつもりなんだけど、、」

岩本「そっか。」

照は何か考えてるように「うーん」と唸る。

岩本「俺思うんだけどさぁ。」

佐久間「お？」

岩本「嘘だろ、って目を疑うような、自分の想像を遥かに超える物とか、人を見つけた時って大体疑ったり否定から入るじゃん。」

佐久間「あー、本当に？ってなるよな」

岩本「そう。未知のものが怖いから。」

佐久間「そうねー」

AKIRAをyoutubeで初めて見た時、多分、2年前。
どこかのダンサーさんかと思ってたけど、コメントで一年前にダンスを始めたばかりの子だって書かれてて「嘘だぁ」と言葉を漏らした時のことを思い出した。

岩本「でも、いつかさ、その否定的な人達は、その人の本当の実力と魅力を知っていくうちに、その未知への疑いが興味に変わって、憧れに変わって、AKIRAの背中を押す日が来るんだろうなって、俺思っててさ。」

照も、AKIRAの動画めっちゃ見てたからな。応援したい気持ちはあんだろうな。

岩本「でも、俺らとは何もかもが違うからな。」

佐久間「あー、女の子だからってこと？」

岩本「いや、もっとこう、、のしかかってるものっていうか、見えてるものが。」

抽象的で、よく分からなかったけど、その"のしかかってるもの"の存在がAKIRAを蝕んでることに俺達はまだ気付けずにいた。