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ー『雪乃屋大広間』ー佐久間ー
その子はよろけながらも部屋を出て行った。沈黙を破ったのは玉藻だった。
玉藻「本当に良かったのかい?嘘を見抜くその目があるなら、わかっていただろうに。」
目黒の目は鬼の千里眼を受け継いでいる。人間の嘘を見抜く力がある。
目黒「現に嘘をついていたじゃないか。」
玉藻「最後はついてなかったろ。・・・それに、全ての嘘が悪いものだとは、わたしは思わないけどね。」
深澤「どういうことだ、」
玉藻「そのまんまの意味さ。あの子の嘘には邪気なんてこれっぽっちも感じなかった。」
マタタビ「あたしも同じ意見さね。あの子からの言の葉には、後悔と恐怖、信念、それくらいのものさね。」
目黒「なんで妖があいつの味方をするんだよ、」
玉藻「これだから、鬼は女々しくっていけないよ」
目黒「なに?」
玉藻「味方や敵なんて関係ないのさ。あたしだってあんたの味方になったつもりはないよ。あたしは辰哉に憑いた妖ってだけさね。」
マタタビ「あたしは大介に好きで憑いてるからね、その時点で妖や人間の隔たりなんてどっかに消えちまったよ。」
目黒「何が言いたい」
玉藻「陰陽師の人間じゃなかったとしたら、あんたはあの子を先刻みたいに追い出したのかい?」
目黒「まさか。」
玉藻「じゃあ、3日前に妖が見えるようになったあの子に、妖を殺せると思うのかい?見たんだろその目で、それが嘘でないことを。」
目黒「・・・」
玉藻「追い出すのは、話を聞いてやってからでも遅くはなかった思うけどね。」
目黒「・・・」
村上「蓮、」
真都が口を開いたその時だった、大広間に続く廊下を大きな足音が複数近づいてくる。
阿部「照たちが帰ってきたみたいだ。」
マタタビ「大介、あたしは影に入ってるからね。あいつと顔を合わせるなんてごめんだよ。」
マタタビはそう言うと俺の影の中に入って行ってしまう。大広間の開きっぱなしにしていた襖から照と翔太が入ってくる。
岩本「遅くなってすまない。」
渡辺「あぁ、疲れた。あれ?飯は?」
岩本「飯どころではないだろ、翔太。」
深澤「どうした?」
岩本「森に濃い酷曇の跡があった。触れれば生身の人間なら深手を追うほどの濃さだった。それから、所々血痕があってな、酷曇にやられたんだろうが、それらしき死体はなかった。」
それを聞いた俺と辰哉と阿部は顔を見合わせた。
深澤「まさか、」
阿部「でも、おかしいだろ?陰陽師の酷曇がなぜあの子を攻撃しなければならないんだ?」
岩本「あの子?」
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Asura(プロフ) - ありがとうございます!楽しみなしてます😆 (6月9日 1時) (レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - Asuraさん» はじめまして!コメントありがとうございます!まだ続編移行しておりませんので、しばしお待ちください!移行しましたら移行先貼りますね😊 (6月8日 1時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
Asura(プロフ) - 初めまして!スヒョンさんのお話大好きです❤️いつも更新楽しみにしながら読ませていただいてます😆突然なのですが、続編の移行先はどこになりますか? (6月8日 0時) (レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - 39ra1sh0wさん» コメントありがとうございます!usermho6x4ya37←こちらになります!作品名検索でも出てくると思います! (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - はなさん» はなさんコメントありがとうございます!嬉しいです😊 (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スヒョン | 作成日時:2023年4月22日 2時