. ページ4
ー
着替えの浴衣と襦袢を渡されて、湯殿まで案内してくれた藤色の着物の男の人は鈴を帯につけた女の人に「辰哉」と呼ばれていた。
女の人は「お前」と呼ばれていたからもしかしたら夫婦なのかと思ったけれど多分違うんだろう。夫婦のようなやりとりはかけらもない。
「上がったら家の者に声をかけておくれ」
「(頷く)」
戸に鍵をかけ、袴を脱ぎ、帯を緩めて着物を脱ぎ中へ入っていく。
お湯に手を入れるとしもやけに沁みるが、そこまで痛くはなかった。
「どんな薬を使ってるんだろう」
傷を避けながら優しく体を洗い湯船に浸かってみると、とろみのある薬湯が体を包むように肌を滑っていく。不思議と傷の痛みが薄れるような気がした。
用意してもらった浴衣に着替えて、湯殿を出て辺りを見回すが人影がない。「家の者に声をかけて」と言っていたけれど・・・。
薬舗にしては広い造りのようで、歩けど歩けど人に会わない。来た道を戻った方が良いだろうかと思っていたら、廊下の角から来た人にぶつかってしまって、少しよろける。
「あ、ごめんよ。
あれ？お客さんかな？
客間とは逆の方だけれど、迷ってしまったのかな？」
「・・・(頷く)」
「そうか。なら案内しよう。
着いておいで。」
その人は鶯色の着物を纏った栗色の髪をした男の人だった。初めて会ったわたしに対して嫌な顔ひとつせずに快く案内をしてくれた。ここの家の人は人を警戒したりしないのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1126人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Asura(プロフ) - ありがとうございます！楽しみなしてます😆 (6月9日 1時) (
レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - Asuraさん» はじめまして！コメントありがとうございます！まだ続編移行しておりませんので、しばしお待ちください！移行しましたら移行先貼りますね😊 (6月8日 1時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
Asura(プロフ) - 初めまして！スヒョンさんのお話大好きです❤️いつも更新楽しみにしながら読ませていただいてます😆突然なのですが、続編の移行先はどこになりますか？ (6月8日 0時) (レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - 39ra1sh0wさん» コメントありがとうございます！usermho6x4ya37←こちらになります！作品名検索でも出てくると思います！ (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - はなさん» はなさんコメントありがとうございます！嬉しいです😊 (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：スヒョン
| 作成日時：2023年4月22日 2時
