6 ページ6
「A、切島さん来とるで！」
絵を描いていると下から母の声が聞こえた
時間を見ると11時
こんな早くに訪ねて来るのは初めてだ
下に降りる途中でお母さんと切島さんの話し声が聞こえて来る
あの日から切島さんとお母さんはよう話すようになってきた
私としても母と切島さんが仲ええのは嬉しい
下に降りると
切島さんがいつもと違う格好をしとった
軍服やなくて制服を着とる
「おはよう！ 今日休み貰ったから一緒に出かけようと思ってな」
休み…？
確かお休み貰えるのって凄く珍しい事じゃ…
そんな大切な時間を私に費やしてくれるのがとても嬉しかった
______________
「ふぅ〜今日はすごい楽しかったです！
またお出かけしたいですねぇ！」
田んぼ道を歩き、橋を渡ると切島さんが歩くのをやめた
「切島さん？」と声をかけると
「Aに…話さなきゃいけんことがあるんだ」と、真剣な顔で言った
私は生唾を飲み込み切島さんと向かい合った
「実は大分前から戦闘機訓練受けてたんだ、
何回か戦場にも行ってる、黙ってて悪かった
んで、こっからが本題だ
移動する事にになった此処じゃなくて違う所に
…死亡率が一気に上がる」
頭がズーンと重くなる
大分前から訓練受けてるとか、戦場に行ってるとか前私と会った時にでも言えたじゃろ、
なんでそん時に言ってはくれんのですか！…と怒りたくなるが
「…ほう…ですか……」
実際にはそれしか言えなかった
突然突きつけられた現実
これが戦争というもの、彼は海軍航空の兵隊さん。いつかこうなる事は知っとった。
…知っとったけど…いざその日が来ると受け入れられない
「移動は…いつなんですか…」
一瞬ためらった顔をしたがすぐに私の目をまっすぐ見て
「明日だ」
と言った
震える手を必死に抑えた
涙が出そうなのをさらに抑えた
声が震えないようにしっかり抑えた
だって私より切島さんの方が辛いはずだから
ここで泣いては駄目だ
「…部屋に…上がってってはくせませんか…っ？」
切島さんは静かに頷いた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 99人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜井直（なお）(プロフ) - 続きです。戦争の事をよく知らない人たちにも、広めたほうがいいなと思うような作品でした。大好きで大切な作品になりました。 (2023年2月4日 11時) (
レス) id: f84b7d123d (このIDを非表示/違反報告)
桜井直（なお）(プロフ) - 今、小学校の社会の歴史で原爆のところを勉強しています。そのときは、日本が負けたとか大勢の死者が出たなど、しか教えれられなかったのですが、この作品を見たら、戦争って悲しいくて悲惨なんだなって思いました。この作品に出会えてうれしいです。 (2023年2月4日 10時) (レス) id: f84b7d123d (このIDを非表示/違反報告)
瞳子 - この小説で戦争の悲惨さを改めて感じることができました。今の社会では、戦争を行ってしまうのも仕方がないという考え方もありますが、やはり戦争は行いたくないですね。この作品を投稿していただきありがとうございます。私の大好きな作品になりました。 (2023年1月26日 16時) (レス) @page31 id: 81e852d89e (このIDを非表示/違反報告)
未麟 - なんだか戦争を見てきたようでびっくりしました。それと同時に、私たちがこんなに笑って過ごせているのはかつての人の努力のおかげなのだと感じて、言葉にできない思いでいっぱいです。この作品を世に出していただきありがとうございます。 (2020年7月31日 21時) (レス) id: d440222276 (このIDを非表示/違反報告)
ﾏﾌﾕ - アスパらがすさん、このお話を作ってくれてありがとうございます。今の時代は平和となっておりますが、昔はこんな風に愛する人をそして愛する人の御友人が亡くなるといことかが当たり前でしたのね。今では考えられませんが、こんなにいい作品をありがとうございます。 (2019年2月22日 23時) (レス) id: a3f8b2e990 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アスパらがす | 作成日時：2018年8月15日 1時
