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「じゃあ、足。見せてもらえる？」
「……はい、」
靴下の下に出来た赤黒い痣。たった一瞬でここまでの痣が残るのだから、怖いものだ。痣を見る度に脳内で先程の出来事がフラッシュバックしてくる。冷たい目と三日月型の口元。『可愛い』が『かわいい』だけじゃ無くなる瞬間を見た気がした。
「いっ…」
「……骨は折れてない。でも、打ち所が悪いね」
「ここまで歩いて来なくて正解だよ。後で矢野先生にお礼いいな」とぶっきらぼうな言葉に「……はい、」とだけ返事をする。
もう少し反射神経が良かったら、ここまで酷くはならなかったな……。
「ごめん…、痛いよね……」
「痛いけど…。なんで望ちゃんが謝るの？…それに、わたしがドジだっただけで」
「違う…！……私、見てたの。わざと落としてた所…！」
望ちゃんは女子バレー部で皆が出来ない準備をテキパキこなしていた為、あの時一緒に居なかった。それでも、そんな中でもわたしの事を気にかけてくれていたのだろう。
うるうると大きな瞳に膜が張っているのを見てこっちまで泣きそうだ。
「間に合わなくてごめん…、ごめんね。……アイツら、本当に許さない…」
「…………」
ギュッと抱きしめる望ちゃん。耳元で聞こえる望ちゃんの声は涙と怒りが混じったような声だった。でも何処か優しくて、わたしの背中を撫でてくれる。
そんな彼女の背中に両手を回してお礼を伝えた。
「ありがとう、望ちゃん」
「いいよぉ、そんないちいちお礼なんて…。当たり前の事」
本当に、望ちゃんが居てくれて良かった。
そう感じているとそらる先生は冷静な声で「治療してるからちょっと後にしてくれない？」と言ってきた。
「なんですか！その言い方はぁ！こっちは感動のハグをですねぇ！！？」
「少し腫れてる。一応湿布は貼るけど、しばらくは痛いかも」
「はい…」
「無視すなぁ！！」
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