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今にも綺麗な指で相手の女の子数人を引っ掻きそうな望ちゃんを止めに入る。「でもさぁ！」と怒ってくれる望ちゃんを見てそれだけで十分だと思ってしまった。
「……悲劇のヒロイン気取り？…、まじウザイ」
去り際に言われた一言。その言葉が何度も何度も頭の中で繰り返す。その言葉はこびり付いて次第に自分の調子まで狂わせてしまう。
褒め言葉より悪口の方が心に来るのはきっと、そうやって何度も何度も繰り返してしまうから。ふとした時に思い出しては記憶に残って、早く消そうと思う度に意識してしまう。そうして心を乱されて、どんどん自分に自信が無くなっていく。
「Aなら出来るでしょ」
「ママとパパの期待を裏切らないでね」
「っ……！」
ブンブンと頭を横に振る。こびり付いたそれは次第に恐怖になってトラウマになる。きっと、コレもその内そうなるのだ。
「なんなの、アイツらは〜！！本当にムカつく！！……大丈夫だった？」
「でも、わたしにも悪い所があったのかも……」
「ある訳ないでしょ！！アイツらが一方的に〜…！！ああいう女は絶対モテない！！ブスが顔に出てんだよ！付き合っても絶対クズ男となんだから！！……あーもー！天罰下れ！！」
本当に友達にだけは恵まれている。
望ちゃんが友達で、本当に良かった…。
それだけでなんだか心が救われた気がする。
「あはは…、そろそろ急ごう？先生に怒られちゃう」
「んー…。まあ、それもそうだね！」
歩を進めて東棟へ向かう。
西棟と東棟に別れた校舎。西棟は主に教室や職員室、保健室などがありガヤガヤと賑わっているが東棟に入った瞬間日常から切り離されたかのように静まり返る。特別棟とも呼ばれる東棟は美術室や音楽室などが配置されている。
ここの空間が、少しすきだ。
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