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「思い出させて、ごめんね」と謝って、ぎゅっと優しく抱き締めてくれる。「Aをフッちゃうなんて、馬鹿な男だなー」なんて慰めてくれた。
それが凄く温かくて、心地好くて、甘えてしまいたくなる。
「半分は私のせいだ…。あ"ーー。あん時大袈裟なリアクションしちゃったから。マジ馬鹿でごめん！」
「そ、そんな……。きっと大丈夫だよ」
人の噂も75日。その期間だけ我慢すればまた平穏が戻ってくるなら、黙って二ヶ月半を過ごせばいい。それにもうすぐ夏休みに入るんだから、そんな噂も消えてしまうだろう。そう思ってた。
「……そうでも無いと思う」
「え？」
「もし、この噂を流したのが志麻先輩のファンクラブの人達だったら凄い面倒だよ。皆が『同じ位置』だから仲良く出来るの。それで、一人だけ抜け駆けしようもんなら、その一人を全員で全力で潰してくる」
それはまるで永遠と湧いて出てくる蚊のように人の美味しい所だけ吸い取って不快にさせる。そんな連中だと望ちゃんは説明する。
そんな、人を虫みたいに……。なんて思ったが冗談を言ってるようには見えなかった。
「アイツらの気が済むまでずっと続く。それこそ息の根を潰すくらいまで考える子も居るかもしれない。【盲目】ってそこまでしちゃうんだよ」
「……」
触れても触れなくても騒がれる。
志麻せんぱいと話していようが、話してなかろうが関係ない。そこに事実は必要ないのだ。ただ、邪魔だから消す。
目をつけられた時点で終わりだったんだ。
その時ゾッと背中が凍りついた。ゴクリと生唾が妙にリアルにゆっくりと器官を通っていく。瞬きの回数が多くなって、上手く息ができない。
なんだか、周りの空気が痛くて、ヒリヒリして、掻き乱したくなる。
がまん……。我慢しなきゃ。
安静が一番だと良くいうでしょ…。
もっと、もっと、我慢すればいいだけの話。
「大丈夫だよ、忍耐力は強い方だし…」
「そういう問題じゃないしー！何かあったら言ってね？？絶対だから」
「うん、……ありがとう」
孤独になれば傷つかなくて済むと誰かが言っていたけれど、わたしは弱いから一人になる事も出来なくて。今の環境下の中全てを背負い込めばいいんだと思った。
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