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「うわ、大変そー。持っていくの手伝おうか？」
「い、いえ…そんな……」
「全然遠慮しないで！持っていくのまーしぃだから」
「はぁ！？ちょ、坂田」
「いいって。まーしぃ。まふ先生には遅れるって言っとくしさ」
ヒョイっと志麻せんぱいの手から美術の教科書と筆箱を取ったその人は「今度お昼奢ってね」と楽しそうな笑顔で前の二人について行くように小走りした。
「じゃー！」
「ったく…」
会話のやり取りから二人の仲の良さがわかる。なんというか、うらたぬきせんぱいと話している時もそうだったが志麻せんぱいの声のトーンが明るくクリアに聞こえる気がするのだ。
はぁ……とため息をついた志麻せんぱい。重くなってきたワークを持ち直して「ごめんなさい、わたし大丈夫です」と言おうとした時に「ごめんね。重いでしょ。半分もらうね」と半分以上をかっさらって行った。
「あっ、いや、大丈夫です…！」
「授業サボるついでだって」
「……ありがとうございます」
「うん。どういたしまして」
お礼。ごめんなさいよりも先に言える日はまだ遠いけれど少しは受け入れた方が相手にも変な気を使わせないという事をこの頃学んだ。
荷物を持ったまま廊下を歩いているがその中に会話はなく、わたしに歩幅を合わせて歩いてくれる。その優しさに素直に喜べない自分がいた。理由はいくつかあるけれど一番の問題は周りの人の気持ちを考えたらというもの。
学園の王子様と呼ばれている志麻せんぱいと名前も知られていない一般生徒が隣に居て話していると言うだけで違和感がある。教室で広がった寒さが全て物語っている気がした。
「あの」
もう、わたしみたいな人に気にかけないでください。
そう言おうとした時、偶然にも志麻せんぱいと同じ言葉が重なった。
「あ、なに？」
「いえ、…志麻せんぱいは？」
「あー…うん。その前にケーキ美味しい店があるって言ってたじゃん？俺の部活毎週月曜日は休みだから来週ぐらいにどうかなって」
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