close 3 - �� ページ18
.
思考が不安になる中、首を振ってケーキを一口食べる。
感情と比例して甘いデザートはお腹も心も満たしてくれる気がした。
「いいよね。こういうとこ来るの」
「え？」
「……なんて言うか俺、男だし？……友達も男ばっかでどこ行くかってなったら大抵駅前のマックとかだし」
「……」
「こういうスイーツだけ！っていう店に行くの憧れあったんだ〜」
「だから、ありがと」そんなお礼を言われる。
お礼なんか言われる立場じゃないのに。寧ろ今日はお礼をするのが目的だったからそれに対してのお礼なんて求めてもいなかった。
志麻せんぱいの方が、何倍も律儀だ。
「そ、そんな……」
「それで、お願いがあるんだけど」
「……え？」
「……その、…。もしまた行きたくなったら、その、誘ってもいい、かな？」
パチリ。一度だけ瞬きをする。
紫色の瞳とぶつかった後、すぐに視線を逸らして数回瞬きを繰り返した。
「あ！や、その俺、女の子の友達とかあんま居なくて…」
「あ、ぁ、はい。えっと、わたしで良ければ」
「まじ！！！？」
「え、いや、え、…あ、はい」
良かったと安堵する志麻せんぱいと未だに思考がついて行かないわたし。確かにこういう場所に来るなら女の子の友達が一人いた方が何かと都合はいいと思うけれど、その相手がわたしでいいのか不安だった。
そんな不安を他所に志麻せんぱいは嬉しそうに、「じゃあいつでも連絡出来るようにLINE交換しよう？」とQRコードの画面を渡してくれた。
こんな自然に、LINEの交換を……。
やっぱり学園の王子様ってすごい……。
断る理由もなければ、これもお礼の延長線だと思えば自然と交換できた。お父さんを含めて三人目。男の人の連絡先を知るのはこれで三回目だった。
「ありがとう！今度は俺から誘うね！」
そうやって笑う志麻せんぱい。
その笑顔を見つめながらわたしは「こちらこそありがとうございます」とお礼を言って、LINE画面に視線を落とした。
志麻せんぱいの名前よりも先に目につく彼の名前。
連絡先は、もう、消した方がいいのかな……。
消したく、ないな…。
甘いケーキを食べたせいか、胸が重くなる気がした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 228人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
