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「ごめん。その、……俺たち別れよう？」
電話越しに久しぶりに聞いた声は、わたしの涙腺を壊す事なんて容易いものだった。放課後、違う学校に受験した彼から電話があって、珍しいなと思いながら、人気のない場所に移動してから電話を取れば初めの言葉を告げられたのだ。
「……うん、わかった」
その後の返事も聞かずに電話を切る。
泣いている声をこれ以上聞かれたくなかったから。
何となくそうなんじゃないかなと予想してた。中学の頃から彼はクラスの中心人物で、わたしはすみっコで本を読んでいるようなタイプ。
高校生になっても、たまに会おうねと言われてから返事を返して入学から二ヶ月過ぎても会うことなんてなかった。それだけ今の学生生活を謳歌していたのだろう。切れた電話画面をオフにしてギュッと握りしめ、その場でしゃがみこむ。
本当は、好き。
まだ、すき。
でも駄々を捏ねて面倒くさい女だと思われたくない。
わたしの勝手なわがままで彼を引き止めるなんてしちゃいけない。
彼のこれからの幸せを、邪魔しちゃいけないんだ。
「……っ、」
もう、彼女として振舞っちゃいけない。
もう、好きだと伝えてはいけない。
そんなルールを言い渡された訳では無いけれど、密かな決まり事のように存在するそれに従わなければ、重い女だって思われちゃう。
「ぅ、」
涙を押し殺そうとしているのに、それとは反対に止むことをしらない。まだここは学校だから家まで我慢しなきゃいけないのに、止まらない。
「大丈夫？もしかして、具合悪い？」
「っ、」
誰も来ないと安心していたからこそ出ていた涙。ここにいたら邪魔になってしまうと思い、聞こえているか聞こえてないか分からないくらいの小さな声で「ごめんなさい」と謝ってその場を立ち去る。
はずだった。
「わっ、」
歪んだ視界のせいで足元がよく見えていなかったせいか、盛大にその場で転けてしまう。勢いよく転んでしまったせいか手のひらと膝がすごく痛い。
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