@あめふり なるせちゃんに恋する彼女 ページ34
雨は昔から好きだった。篭ったような雨音が全てを消して隠してくれそうな気がするから。
……今日は雨だ。
薄暗い部屋の中、光のない場所で息をする。
少しベタベタする感覚と独特の匂いが晴れの日とは違う世界に感じるから。
「……なるせちゃん、傘持ってたかな」
LIVEで家を開けているなるせちゃんは帰ってくることはないのに、つい気にしてしまう。
帰ってきたら何をしてあげようかな。
お疲れ様って言って。
好きな物食べさせてあげて、地方での話を聞いて。
「学校、サボっちゃおうかな……」
雨の日の学校は嫌いだった。
いつもより影の濃くなる校舎は小さな悲鳴を隠して、白い箱の中で皆が掟を破る。
学費も払ってるんだから、行かなくちゃ行けないのに。成績表にバツがつくから、両親が支えてくれてるんだから、しっかりしないと行けないのに。
「台風、来ないかなぁ…」
いっそ、まともな理由があれば休む都合が出来るのに。
静まる部屋。広々としたベッド。灯りのつかない薄暗い景色に君がいない。会いたい。
……でも、そんな理由で迷惑かけたらもっとダメ。
……ひとりぼっちは慣れたはずなのになぁ。
光り出す携帯がバイブと共に揺れる。画面を表示すれば、今、まさに会いたい人の名前が映し出された。
「っ、もしもし？？」
「あははっ、出るのはやー」
くすくすと笑う彼の声を聞いて、胸が熱くなる。冷たい部屋の中に色がつき始めて、重たい頭が動き出す。
なるせちゃんの声だ……！
生なるせちゃんだっ！
……いや、生じゃないんだけどさ！
「どうしたの？朝から」
「今日、帰るから。ハニーの迎えが欲しいなーって、思ったけど。今日学校だった？」
「……、ううん。今休みになった！今から行くね」
「ふふっ。待ってる」
雨の日は嫌いだった。
でも昔、ある男の子が雨の日に手を差し出してくれた。白い箱の中で子供たちのルールを破った男の子。彼のその声が世界に色を付けてくれる。
「待ってて。ダーリン」
教室の中でのルール
悪いことは、全部あの子に任せること。
救いようのないあの子に、手を差し伸べてはいけないよ。
じゃないと、次の標的は君の番だよ。
ランクが決まってて、同じドレスコードを守って、友達っていう薄っぺらい関係を築き上げる。
はみ出しもの。端切れ者。
……薄汚れた灰被り姫は、
かわいい王子様を待ってるの。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 82人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「歌い手」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
結月(プロフ) - 私の存在を少しでも知っていただけていることに凄く恐縮です…。お忙しい中、お返事ありがとうございます。アンケートも必ず投票致します！作者様の物語が大好きです。こちらは返信不要で大丈夫です´`* (2018年11月26日 14時) (
レス) id: 286dc51d91 (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう。(プロフ) - 結月さん» コメントありがとうございます。短編集の方にも毎回覗いて見てくれてますよね？嬉しいお言葉ありがとうございます。各シリーズの方はまた詳しくお知らせしますが近々アンケートを取りますね^^*最高のお話を届けられるよう、頑張ります！ (2018年11月26日 13時) (レス) id: 5845111e18 (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - そして、あとがきにあった、各シリーズの小説、、物凄く読みたいです。作者様の書く物語が本当に好きなので、大賛成です！！その事をお伝えしたくて、本日はコメントしました。２回に分けてのコメント大変失礼致しました。これからも応援しております！結月。 (2018年11月26日 12時) (レス) id: 286dc51d91 (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ずっと陰ならが応援していました。初めに、完結おめでとうございます！素敵な物語の数々に、すごく幸せな時間を過ごせました。Vol.6も140字もこれからの更新楽しみです！(続→) (2018年11月26日 12時) (レス) id: 286dc51d91 (このIDを非表示/違反報告)
I8JghE0raXSJg8d(プロフ) - 全然大丈夫ですよ！！坂田さんの本当にすごいと思います！ありがとうございます！ (2018年11月26日 0時) (レス) id: d98bcf15c5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
