見返り ページ28
私は……今、何をしている。
中庭の花壇の脇の水道から流れるホース。
滴る水、風の冷たさを感じる身体。
「あんたのせいや」
「…なんて？」
「あんたのせいで…うちら別れたんやで」
秋といえど、肌寒い。
眼鏡が濡れて見えづらいけど、
凛ちゃんは確かに泣いている。
…いやいや、なんで私のせいなの。
「違うでしょ、君がミヤアツと浮気したからでしょ」
どう考えたって君のせいなのに、と思った時、
あぁ、そうか、と分かってしまった。
「せやからっ！！！その前の話や！！」
「あんたが…あんたらがやけに仲良うするからっ、
うちの入る隙あらへんかったっ」
けど、それがミヤアツと浮気する原因には
味が薄すぎるでしょ。
「他にも浮気する理由なんてあるでしょ、
それを全部私のせいにするのは違うよ」
化け物を睨むような目付きだった。
「せや…侑とうちは同じなんや、
侑の彼女は最低な女なんや、
侑っていう彼氏がおるのに他の男とも付き合うてる」
私は目を丸くする。
「なに、それ…」
「侑は、…泣いてたんや、アイツが泣くんは
相当なんや。せやから、っ…」
…せやから、なに？
「だから何？」
俯いて何も言わなくなった凛ちゃんをみて確信した。
次、次の言葉で何かわかる。
「…早く言いなよ」
私は自分の背丈を使って脅す。
すると、案外ポロッと溢れて。
「……うちが侑にキスしたんや」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レモンさん | 作成日時：2021年1月6日 17時
