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羊雲 ページ26

私は何も言えなかった。
黙って、隣にいることしかできなかった。






「もう吹っ切れた顔してるね」
「まあな、Aがおるからな」





そう言って此方を向いた。
太陽の光が差し込んで、瞳が輝いて見える。







「…Aは?まだ俺に堕ちてくれんの?」
次は、私が空を見上げる番が来た。






ゆっくり動く羊雲を見送りながら、私は言う。
「…私、人を好きになれないの」






「…………」
彼は黙ってしまった…いや、次の言葉を待っていた。






「……内緒にしてね、これ倫太郎しか知らないから」
私は日頃の愚痴を呟くように、






そう、当たり前のように。
だけど、小さく、小さく囁く。







「……私の元彼、もういないの」
それが何を示すかなんて、分かってよね。






「…私のせいで、…死んじゃった」
風のせいで聞こえないんじゃないかってくらい。






背が高くて虐められてた私を、庇って、
的が変わって、遂には自分が耐えられなくて。






「悲しいなんて言うより、怒りのが勝っちゃった」
だから、壊してやった。






変な嘘ばらまいて、浮気だの、DVだの。
虐めた奴らをめちゃくちゃにかき混ぜてやった。






………楽しかった、なぁ。
絶望に耐えられないなら庇わないでよ。






私だって一人じゃなかったんだから。
…死ぬ意味、あった?






私、歪んでるなぁ。
「…日曜、どこ行こうか」






私は頭にふっと浮かんだそれを呟く。
「…んー…なんか飯食いに行こか」






彼は冷静だった。

嘘にも種類がある→←耳に入れたら痛い話



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作者名:レモンさん | 作成日時:2021年1月6日 17時

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