＜UNISON＞シュガーソングはビターテイストー超人気バンドのキーボード、始めましたー (ページ3)

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3曲目♪ オリオンをなぞるページ3

あれから２週間が過ぎた。
　まだはがきは―来てない。
　毎日ポストを確認しているけど、チラシしか入っていない。
　今日もそうだった。
　私はため息をつきながらポストのふたを閉め、ドアを開けた。
　「ただいまぁー。」
　「奏っ！」
　お母さんが叫んでいる。
　「どうしたの？」
　お母さんは蒼白した顔で言った。
　「UNISON SQUARE GARDENさんから！」

　「じゃあ合わせよっか。」
　斎藤宏介が私ににこっと笑いかけた。
　今も信じられないけど、私はキーボードに選ばれた。１万人から選ばれたのだ。
　私よりうまい人だってちょっとやそっとはいたはずだし、なぜ私を選んだのかが謎。
　超嬉しいんだけどね。
　だって舞花に教えてもらってから毎日動画を聴いて、ライブも県外まで走った。
　もう一ファンなんだ。
　そして一メンバー…。
　「初めて合わせるね。奏ちゃん、緊張してる？」
　田淵さんが言った。
　「い、いえ…」
　「照れてる、かわいー！」
　鈴木さんも笑った。
　「まずはオリオンからいこっか。」
　オリオン！？
　オリオンをなぞるは私の最も好きな曲だ。
　疾走感があるけど、斎藤さんの声が際立っている。
　私は深呼吸してキーボードに向かう。
　―曲が始まった。
　お馴染みのイントロから、歌に入る。
　ああ、やっぱり、好き―。
　自分が一緒にこの曲を奏でていることが信じられない。

　「…やばかったね！」
　「奏、最高！」
　宏介さんが私にハイタッチする。
　か、奏！？
　「呼び捨てでいいでしょ？」
　やっぱり…
　目鼻口ちゃんと整っている。
　美形だな…。
　「おい、見ろよ！」
　鈴木さんが指さした先には…
　「オリオンだ。」
　「知ってる？」
　田淵さんが微笑んだ。
　「日本ではつつみって言われてたんだぜ。」
　へぇ。
　私はもう一度それを見た。
　「なぁ、なぞろうぜ、オリオン！」
　私たち４人は指を空に向け、オリオンをなぞった。