short hair *33 ページ33
*
行き場のない感情に耐えきれなくなって、
制服のスカートの裾を強く握りしめる。
私は馬鹿だ。
諦めた方がずっと楽で、
今さら気持ちを伝えるなんて出来ないのだから
何をこんなに迷っているのだろう。
迷う選択肢すらないのに。
コンクリートに映っている
短い髪の女の子の影が凄く惨めなものにみえた。
…こんな顔じゃ会えない。
とりあえず、顔を冷やそうと思い立って
手洗い場まで歩いたところで
前方かタッタッタッと走る音が聞こえて、
嫌な予感がする。
この予感が当たっていませんように
「待たせてわりーな。」
ちょっと息切れした優しい声は
そんな私の思いを呆気なく壊してしまった。
頭が真っ白になって、それで…
気づいたら私はクロに背を向けて走っていた。
とりあえずその場から逃げたかった。
後のことなんて考えられなくて
何から逃げているのかも本当は分かっていなかった。
「おいっ!待てよ!!」
突然に逃げ出した私を優しい貴方が
ほっといてくれるはずもなく、
自分の後方から
強く地面を蹴るような足音と共に
クロの声がしていた。
無視なんて本当はしたくなかった。
クロから背を向けて逃げ出すことも。
だからまた胸が傷んで、分からなくなる。
だけど頭は逃げることに不思議なほど冷静に
この道を曲がって真っ直ぐ、
部室に行けばいいのだと思った。
そうしたらクロもこの追いかけっこを諦めて、
早くとも部活が終わるまでは、
部活後に上手く逃げ切れたら明日の朝までは
クロと会うことはない。
この情けない顔を見せずに済む。
しかし私の計算は甘く、
考えていたようには事が進むことはなかった。
私の腕は貴方にしっかりと掴まれていた。
顔は見えないが、貴方だって分かった。
相変わらず頭は真っ白だったけれど、
クロは私が思っていたより
ずっと足が速かったのだと、そう思った。
その事実だけがすっと頭に入っていった。
short hair *34→←short hair *32
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2020人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
仁(プロフ) - 大好き。マジありがとうございました！！！！！ (10月14日 18時) (
レス) @page50 id: 270b34836a (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - クロさんじゃなく夢主さんはうちと結婚しましょう（（）） (7月30日 12時) (レス) @page50 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ドク(プロフ) - 尊い…好き…ナニコレ、最高でしかない…！！！キュンキュンが止まりません、マッハです！！神作ありがとうございました！！！ (2022年7月14日 16時) (レス) @page50 id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
LUCA(プロフ) - とても素敵な話でした。後半から感情移入してしまって、泣いちゃいました！ありがとうございました！！ (2022年6月26日 17時) (レス) @page50 id: 26acec27f5 (このIDを非表示/違反報告)
たま - 普通に泣きました！！ (2022年5月12日 15時) (レス) @page50 id: 3f769884b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：金平糖 | 作成日時：2018年8月14日 22時
