君の記憶が無くなったあげく俺は女化したので君を好きでいるの止めたいと思います【さかうら】

0. ページ2

「は.......？」

「お医者さんも、本当に珍しい事だって、言ってて.....っ」



少し涙目になりながら話すセンラ。
俺の事考えてくれてるんかな、と考えられてしまう程、センラから言われた事に脳の処理が追い付かない。



「本当に、言ってんの....？」

「本当だよ。しかも、俺らの事は覚えてるみたいなんや。浦島坂田船の事も。けど、坂田の事だけ分からへんみたい」

「な、んだよ.....それ」



こんな事ってあるのだろうか。
こんな奇跡、嬉しくない。
けど、これも運命。
運命は人情を気にせず廻り続ける。

そう心の中で唱えて、自分を納得させた。



それから暫くして、二人は帰っていった。
二人は帰る直前まで、「坂田なら大丈夫や」と励ましてくれた。

隣に眠るうらさんの顔を見る。
相変わらず整った顔だ。
うらさんの顔を見ていると、涙が出てきそうだ。



「本当に...俺の事忘れてんのかなぁ。起きたら夢でしたーとか、ドッキリですーなんて事、無いよね.......」



そんな俺の問いかけには誰も応えない。
すると、ガラガラっと音を立てて病室の扉が開いた。



「あら。起きてたのね」

「はい.....」



看護師さんが何やらご飯と薬みたいな物を持ってきた。



「はい、これ、ご飯ね。ゆっくり食べなよ。あと、これは食後の薬。忘れずに飲んでね」

「ありがとうございます」



まだ実感していないショックにうちひしがれていたので、看護師さんの優しさが身に染みる。

丁寧に作られたご飯を食べ、薬を飲み、眠くなってきたので、寝る事にした。









夜中。

体が何処かムズムズしたので、起きてしまった。
大きく欠伸をし、視線を落とすと、

パサ

という音がした。
頬に当たる何かの感触に違和感を覚える。
その何かを掴む。
これは......髪の毛？

.......って、それはおかしい。
俺は長髪じゃない。

でも、もしかして......と思い、胸の辺りを触る。
あ、と声を漏らし、確信した。
俺、



「女に....なっとる！？」



おかしい。そんな訳ない。
きっと寝惚けているだけだ。多分。

でも、不安なのはそこじゃない。
うらさんの記憶が消えている今、俺の事を思い出してもらう事が最優先になる。
そんな中、俺が女になったら、もっと思い出す事が難しくなるだろう。

しかも、最大のライバル、まーしぃが居るのだ。
まーしぃは、俺とうらさんが付き合ってもうらさんの事を想い続けている。

記憶が無くなり、女になって、ライバルが居て.......。



また一から頑張るのって、可能ですか？

1.挨拶から頑張ってみた→←0.何で、君が。何で、俺が。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す