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れんげの花言葉 ページ7

夜が明けた翌朝、彼女はアメリカ行きの便に乗って日本を飛び立った。

終わりはあまりにも呆気ない。



あれから何日か経って、すっかり秋めいた涼しさの中でベッドに寝転がる。引き出しから彼女が去年の誕生日にくれた手紙を引っ張り出してきて、それを広げた。花が描かれた便箋には、彼女の整った字が列を成して並んでいる。彼女に貰った時は、便箋に浮かぶ花になど目を向けなかったが、なんとなく今日はそれが気になった。

携帯の検索ツールを呼び起こして、花の特徴を並べて打ち込む。いろいろと試して、ようやくひとつの花に辿り着いた。



「…レンゲ、ソウ」



レンゲソウに関して並べられた文章を読んで、ふといつかの彼女の言葉を思い出した。



『ねえねえ、花言葉って知ってる?』

『なんだそれ』



高校から帰る途中で、突然彼女が問いかけてきた。花言葉、というフレーズは聞いたことがあるけれど、正直よくは知らない。彼女は つまんないのー、なんて頬をふくらませていたけれど、結局その続きを聞くことはなかった。

彼女がなぜ急に花言葉だなんて言い出したのかは想像も出来なかったけれど、彼女の横顔は楽しそうだった。



思えばそんな話をしたのは、俺の誕生日の少し前だったような気もする。不規則でバラバラだった点が、一瞬にしてひとつに繋がったように思えた。



「レンゲソウの花言葉、…なんだよそれ」



レンゲソウの花言葉。開いた画面の真ん中で、並んだ六文字が目に入る。

『あなたといると苦痛がやわらぐ』『心がやわらぐ』


彼女の意図したことなのか偶然なのかは、今となっては分からない。でもそれが彼女の想いだと信じるくらいは、残された俺にも許されることなのではないかと思った。

扉の向こうに消えていく彼女を見届けるとき、伝えたかった言葉がどうしても言えなかった。今さら言ったところで仕方が無いと思ったからだ。でも、だけど、そうだったとしても、

彼女に伝えればよかったと思った。俺にあと少し勇気があったなら、それを伝えることが出来たのに。


消えることのない後悔は、秋の風の中でもそこに留まっていた。

*あとがき→←くれる夏の話



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朱里(プロフ) - おと〜ふ。さん» 読んでいただきありがとうございます!感想をいただけてとても嬉しいです( ; ; )描写はいつも一番悩んでいるところなので、そう言っていただけて嬉しいです。励みになります。ありがとうございます!! (2018年9月30日 18時) (レス) id: d7d2aff1aa (このIDを非表示/違反報告)
おと〜ふ。(プロフ) - このお話めちゃくちゃよかったです!描写とかの表現も綺麗で、目次が泣かせにきてて、もう最高でした!!これからも楽しみにしてます(*´∀`*) (2018年9月30日 14時) (レス) id: f4bc1fabd3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朱里 | 作成日時:2018年9月29日 23時

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