どうかこの夜が少しでも長く続きますように【ヒロアカ短編】 (ページ12)

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「――あの「お前らいつまで残ってんだ、もう閉めんぞ」」

　何かを言おうと彼が口を開こうとした瞬間に相澤先生の言葉が遮った。すみません、と慌てて帰りの支度をして教室を出る。

「おい、A、例えヒーロー科であろうとあまり遅くまで残るな。女子だろ」

　すみませんともう一度謝罪をすると、早く帰れ、閉めるぞと返ってきた。
　雨のせいなのかいつもより暗く感じる廊下を、会話もせずに二人で歩く。何かを言いかけていたはずの彼は口を開こうとはしていない。私は私であの話の後にどんな話をしようと考えるだけで、自分自身もいっぱいいっぱいになった。
今日はいつもより廊下を歩く足取りが重い。昇降口に近づくにつれ、雨音がだんだんと迫ってくる。
　これは濡れるなぁ、と考えていると「あのね」と彼の声が響いた。

「好きな人、誰とか聞いても良いかな。あ、もちろん話したくないとかなら全然いいんだけど…」
「どうして、って聞いてもいい？」

　彼の瞳がだんだんと熱を帯びているように見えるのはきっと気のせいだ。お互いの視線はまっすぐに相手をみている。逸らしたいはずなのに、なぜか逸らせずにいた。

「僕はなにもしてあげられないかもしれないけど、気になる人が他の誰かを気にしてるのは、気持ちが分かるから、聞きたいなって」

　雨音が強くなる。周囲には私達以外の人の気配もしない。まるで世界に二人っきりになってしまったみたいだった。その状況は嫌というほど私に彼を意識させる。

「出久くん、だよ。」

　瞳が大きく揺れ動いた。止まった世界が、動き出したみたいに