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「総統閣下！第一書記長！」
両開きの扉を開け、息を切らしながら立っていたのは桃色の紋章を身につけた男_国家情報部隊の人間である。
入室するや否や、片膝をつき、すぐさま立ち上がった。通常であれば敬意、服従心を表すために許可を貰うまで立ち上がらないのがしきたりである。
書記長と、呼ばれた男の顔が少し険しくなる。眉間の皺が少し増えたのを見計らって、グルッペンは口を開いた。
この男は些か頭が硬すぎる。
それ故に、助けられている場面が建国当時からよくあるのだが、たまに息苦しい。
書記長はそれを分かっているのだろう。今も口出しせず、眉間に皺を寄せているだけで済ませている。
「トロシディス情報副部隊長、随分と騒がしいな」
「…無礼をお許し下さい、閣下。実は先程、第一視察団からゼガルに出現した十字架についての情報が届きました」
トロシディスはグルッペンに幾つかの書類を手渡すと、書記長に対しては小さなメモを握らせた。
それを見て、書記長は眉ひとつ動かさずグルッペンに会釈し、その場から離れる。
…扉までの歩数が6歩。
左手を軽く握り、人差し指を出した後に手を広げる。
それを見て、グルッペンが机を2度指先で叩いた。
__
インカムに入る「了解」という言葉を確認してから、グルッぺンはまたコツと机を叩いた。
「…続けろ」
「読み上げます。
__第一視察団からの情報より、イハルト-ゼガルに現れた十字架の形状が、37年前に確認された形状と大きく異なる。前回は災害により引き起こされた自然現象であったが、ゼガルに現れた十字架は酷く残虐的行為によって成り立つ、" 非道の十字架 "であった。」
「！」
「全員麻袋の服を着せられ、個々に死因が異なる。抵抗の痕跡も見られるが、住民宅は荒らされた痕跡は無し。賊の可能性は非常に低いと見られる。そして、…死体の一つに、これが」
それは一枚の真っ白な紙であったが、トロシディスが紙に触れると目の前に死体の写真が投影された。
死体の背に彫られた血文字、それを見た途端グルッぺンから珍しく笑顔が消えた。
蠱毒の血を浴びた、女を捧げよ
血が流れるモノ、全て、この世から消すまで
我らの神はこの地に鉄槌を下し続ける
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作者名：盧 | 作成日時：2022年11月16日 20時
