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しばらく走っていると、隣の方がモゾモゾ動きだした。
深澤「んん…」
「起きた?」
深澤「A?…ったぁ……」
「もう、飲み過ぎだから」
頭を押さえている辰哉に買っておいた水をあげると「わり、」と小さく謝って飲み始めた。
深澤「あれ、照たちは…?」
周りをキョロキョロしながら未だ状況が掴めない辰哉は寝起きの掠れた声で聞いてくる。
「はぁ……もうさっき別れたよ」
深澤「うっそ、まじで…?わりぃ」
「大丈夫なの?ほんと」
深澤「大丈夫大丈夫、ありがとね」
酔いじゃなくて、辰哉のメンタル面のこと聞いたんだけど。
だけど彼には全然伝わってないみたい。
深澤「あとで一応謝っとくか…」
「うん、そうしな、照たちも心配してたよ」
深澤「そっか、って、まじ気持ちわりぃ…」
ちょっと窓開けてい?って聞いてくるから頷くと少しだけ窓を開ける。そこから入ってくる冷たい風が私の酔いも少しずつ覚ましていく。
深澤「当分酒いらねえ…」
「珍しいね、基本強いのに」
深澤「まあね〜、今日はダメだったわ。(笑)」
あ、やってしまった。
少しだけ変わった辰哉の声色を聞いて、これは言っちゃダメなやつだったって後悔する。
「まああと少しで家着くから、我慢ね」
急いで会話を変えたけど、私がそう言うと辰哉は「えっ?」と声を上げる。
深澤「もしかして、俺ん家先?」
「当たり前じゃん」
深澤「もうなんでよ、危ねーじゃん、先帰んなって」
「何言ってんの」
こんな辰哉を置いて帰る方が心配だよ。
それなのにこういう時でさえ人を優先してくる辰哉に呆れてしまう。
もっともっと自分を大事にしてよ。
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作者名:chi | 作成日時:2021年3月4日 23時