好き、その一言 1 【紫】 (ページ13)

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＿＿＿＿＿＿＿＿10年前の春

明日から新学期が始まるということで、美容院に行ったり、必要な物を買いに行ったりしていた。

その時、ふと目に入ったゲームセンター。

懐かしいなって思いながらなんとなくその中をぐるぐる。
すると、1つのクレーンゲームに目がいった。

大した可愛くもない、なんならブサイクよりのぬいぐるみなんだけど。

だけど妙に愛着が湧いてしまい、やってみるかって100円玉をいれた。

この時の私は何かと賭け事を1人でしていて。

ゴミ箱にティッシュが入ったらいい点とれる、とか

サザエさんのじゃんけんに勝てたら今週はいい週、とか

ほんと些細な、そういうことをしていた。

そしてこの時も、

明日クラス替えがあるということで、これが取れたら真奈と同じクラス、ていう賭けをした。

だけど狙ったぬいぐるみはでかく、UFOキャッチャーなんて普段しない私からしたら到底取れるわけもない。

既に7回目のチャレンジ。

別にこんなの欲しくもないんだけどここで諦めたら真奈とクラスが離れてしまいそうだし。

そう思うと意地でも取りたくて無我夢中でやっていた。その時だった。

「それそんなに欲しいの？(笑)」

後ろから突然話しかけられた。

パッと向くとそこにいたのは、同じ学校の芸能コースに通う深澤辰哉だった。

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