贈る ページ3
(side Shanks)
なんと言うか、拍子抜けもいいところだ。
真っ赤なリンゴを一口齧り距離を詰めれば彼女も頬を染める、とまでは思ってはいなかったが、泳ぐ目が俺の期待するものとは違うということは明白だった。
核心を突く俺の問いにおずおずと頷いたA。全く、良い意味でもそうでなくても、どこまでも飽きない女だ。
ロケットペンダントがチェストの上でキラリと輝いた。華奢なチェーンと赤子の拳程のペンダントは彼女の首に下げるにはいささか大き過ぎた。
ドラマに溢れた出会いも、運命的な再会も、語り明かした食事の場も、消えてしまった訳では無い。
そう思う反面、彼女の今の力ない瞳はいまいち魅力に欠ける。
ここまで俺を掻き回す存在は数える程もいないと、この女は果たして分かっているのだろうか。
そんな人間臭い思いを隠すように上っ面の慰めを投げると少し安心したように顔を緩ませた。なんて危機感のない人間だろう。仮にも海賊だぞ俺は。
荒波を乗り越えたであろう髪はパサついている。重ったるい横髪をかきあげてそのまま頭をひと撫でると顔の緩みが伝染する。
シ｢俺の名はシャンクス。ついでにお前の名は優雅だ。今はそれだけ分かっていれば良い｣
綺麗事だ。早く何もかも思い出して、拾い上げた俺を見つめて、飛び込んで来てはくれないか。
撫でていた手が頬に伸びる。白い肌をひと滑りすると歯止めが効かなくなりそうだ。
安心しきった顔で目が細められると、その安心の奥にあるあの男達が過ぎる。
そりゃねえぜ、あんたらが捨てたこいつを救ったのは他でもない俺たちだぞ？
どこまでも、この遠く離れた船の上で、記憶を無くした今でさえ、Aを掴んで離さないあいつらがいよいよ憎たらしい。一時でも俺に譲らないつもりなのか。
ともあれ、記憶が無いというのはこれからで勝負が挑めるともとれる。運が良い俺は、しばらくの間彼女を独占できるのだ。海賊の血が騒ぐ。
親指で目尻を撫でると薄ら潮の跡が浮かぶ。まずは暖かい風呂からだな。
彼女に似合う花を、服を、柔らかいぬいぐるみを、溢れるほどに贈ろう。想いは形に残らないからこそ、物を贈るのは質量を持って届くはずだ。
物にも言葉にも乗らない熱でさえも、触れることのできる今なら時差は無いのだから。
彼女から離れ、あのオヤジへと宛てた手紙をしたためる。きっとあの人は鼻で笑うんだろうな。
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みかん(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！無理せずに頑張ってください！ (2020年10月23日 2時) (
レス) id: fdb31f13e0 (このIDを非表示/違反報告)
なほ(プロフ) - 続き、どうなっていくのかとてもドキドキしています…！すごく素敵な文章なので、本当に楽しく読ませていただいております！完結までついて行かせてください！！ (2020年5月19日 7時) (レス) id: 8033be3257 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 哀羅さん» ご覧頂きありがとうございます！更新が遅くなり大変申し訳ありません…！完結までどうぞよろしくお願いします！ (2020年5月4日 20時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 「ぱずる」さん» ご覧頂きありがとうございます！わたしなんぞの作品でお力添えできたのなら幸いです…！お返事も大変遅くなり申し訳ありませんでした！完結までどうぞよろしくお願いします！ (2020年5月4日 20時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
哀羅 - ずっと愛読させてもらってます！今一番思うことはとにかく！先が気になる…〔笑〕更新ゆっくり自分のペースで良いと思います！更新楽しみにしてます。これからも応援してます！ (2020年4月25日 11時) (レス) id: 11aacecd07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年5月25日 1時
