それから ページ13
(side Thatch)
サ｢よお、A！おはようさん｣
『あっ、サッチ隊長！おはようございます！どうされたんです？』
バーの入口から声をかけると、グラスを磨き夜の開店に向けた支度をするAが愛らしい笑顔で振り返る。
サ｢赤髪が置いてった果物をおすそ分けしてやろうと思って見繕ってきたぜ｣
右手に抱えたバスケットからオレンジを1つ取り出して見せると、Aは嬉しそうに声を上げる。
『わあ！ありがとうございます！』
これで美味しいカクテルができますよ、とバスケットを受け取るA。今日も頭に付けた赤い皮のバレッタが良く似合っている。
赤髪はAと一緒にいろんなもんをこの船に置いて行きやがった。Aはいらないと言っていたがプレゼントだと半ば強引に服やら花やら食べ物を押し付けて帰っていったのだ。
『うん、いい香りです』
受け取ったオレンジをスン、とかいではうっとりとした目で手の中のオレンジを見つめるA。そんな彼女から堪らず目を逸らした。
『あっ、それじゃあお礼にこれを』
何かを思い出した様にカウンターの下に隠れたAが取り出したのは小ぶりの瓶だった。
サ｢なんだ、秘蔵の酒でもくれんのか？｣
『はい！冷蔵庫の奥に眠っていたんです。香りを嗅いでみたんですけど、なかなか良いラム酒ですよ』
こっそり飲んでくださいね、といたずらっぽく人差し指を立てる仕草なんか数ヶ月前と何にも変わっちゃいないんだよなあ。
出されたラム酒を瓶のままぐっと飲み干す。今飲むとも思っていなかったのか驚いた様子のAだったが、次の瞬間にはヒラヒラ笑いだした。
『ふふ、慌てん坊なんですね』
サ｢おうよ！うっかりしてりゃあ兄弟達に取られちまうからなあ｣
一気に含んだラム酒が目の前を緩くぐらつかせる。うっかりついでに目頭が熱くなるのにもそろそろ慣れてくる頃だろうがどうにもなぁ。
『ここは本当に良い場所ですね。皆さん優しくて暖かくて、このバーもすごく落ち着きます。』
カウンターを撫でながら伏し目がちに呟く肩に窓から差し込む日差しが指す。耳からこぼれた横髪がその顔を隠してうまく見えなかった。
サ｢…まあ、無理して思い出すこたねえさ。まだまだ海は続くんだしよ｣
結果から言っちまえば、赤髪がAを連れてきてから数ヶ月たった今でも、Aの記憶は戻らなかった。ゆっくり時間をかけてこの船に馴染んでいくAを受け入れるので精一杯だ。
.
終わり
ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←ヤシの実2
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 267人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みかん(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！無理せずに頑張ってください！ (2020年10月23日 2時) (
レス) id: fdb31f13e0 (このIDを非表示/違反報告)
なほ(プロフ) - 続き、どうなっていくのかとてもドキドキしています…！すごく素敵な文章なので、本当に楽しく読ませていただいております！完結までついて行かせてください！！ (2020年5月19日 7時) (レス) id: 8033be3257 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 哀羅さん» ご覧頂きありがとうございます！更新が遅くなり大変申し訳ありません…！完結までどうぞよろしくお願いします！ (2020年5月4日 20時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 「ぱずる」さん» ご覧頂きありがとうございます！わたしなんぞの作品でお力添えできたのなら幸いです…！お返事も大変遅くなり申し訳ありませんでした！完結までどうぞよろしくお願いします！ (2020年5月4日 20時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
哀羅 - ずっと愛読させてもらってます！今一番思うことはとにかく！先が気になる…〔笑〕更新ゆっくり自分のペースで良いと思います！更新楽しみにしてます。これからも応援してます！ (2020年4月25日 11時) (レス) id: 11aacecd07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：がまお | 作成日時：2019年5月25日 1時
