ヤシの実2 ページ12
(side Shanks)
酒は良い。目の前の事に精一杯になれる。過去の事、1秒先の事を一度床に下ろして一息つける。目の前の人物。騒がしい笑い声。鼻を掠める焼き魚の香り。喉をスルスル落ちる酒の冷たさ。ヒラヒラと笑う小脇の彼女。
今を生きる俺たち海賊にとって、酒は一種のアイデンティティだ。
だからこそ、変わっちまったAを前に目頭を押さえて俯くヤツがどうにも噛み砕けない。やはりAをこの船に置いていくのが惜しい。
『えっ、と、あの、飲みすぎましたか…？お水…』
ガヤガヤと騒がしく歌を歌い酒を飲む白ひげのクルーたちが横目に彼女を見てはすぐさま目を逸らす。物言わぬ空気が胸の奥でガリガリ爪を立て、気づけば手元のグラスが空になっていた。
当のAはと言えば自分の前で項垂れる名前も知らない男を前にあたふたと慌て、水を探しにどこかへ立ってしまった。
こんな酒の場、俺の趣味じゃない。白ひげが退屈そうに空を見上げて杯を傾ける。
シ｢おいマルコ！なーに寝てるんだ！ほら、飲め飲め！｣
こんなお節介、柄じゃねえんだがなあ。
マ｢なっ、おい！赤髪！｣
気づけば腰を持ち上げ、俯くヤツのグラスに波々酒を注いでは肩を抱いて無理やり顔を上げさせていた。
シ｢なあマルコ、この借りは高くつくぞ。俺の船に来る日も近くなったな！｣
肩を抱く手に力がこもる。上げられたその顔を見ようとは思わなかった。
マ｢…ぬかせ、俺の乗る船はこの船だけだよい｣
シ｢つれねえなあ｣
いつもより幾らか威勢の悪い様子で組んだ腕を振りほどかれる。そうでなくちゃ調子が狂うってもんだ。
『あっ、ちょっと、シャンクスさん！だめじゃないですか絡んだら！』
解かれた腕をまた無理やり肩にかけ絡み酒をふっかけているところで、どこから持ってきたのか両手に水の入ったグラスを持ったAがパタパタと駆け寄って来た。
そんな彼女を見るマルコの目が大きく揺れている。今まで通りのAと何かが決定的に変わった今のAがかわりばんこで立ち代るその様子にひどく動揺しているようだった。
マルコは差し出された水を大人しく受け取りぐいと一気に飲み干す。その間も何か減らず口でも叩いていないと、Aの腕を引っ掴んでそのまま自分の船に乗り込み碇を上げてしまいそうだった。
なあマルコ、お前も本当は気づいているんだろう？Aは何も変わっちゃいないじゃないか、その目を見れば分かるだろう？
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みかん(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！無理せずに頑張ってください！ (2020年10月23日 2時) (
レス) id: fdb31f13e0 (このIDを非表示/違反報告)
なほ(プロフ) - 続き、どうなっていくのかとてもドキドキしています…！すごく素敵な文章なので、本当に楽しく読ませていただいております！完結までついて行かせてください！！ (2020年5月19日 7時) (レス) id: 8033be3257 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 哀羅さん» ご覧頂きありがとうございます！更新が遅くなり大変申し訳ありません…！完結までどうぞよろしくお願いします！ (2020年5月4日 20時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 「ぱずる」さん» ご覧頂きありがとうございます！わたしなんぞの作品でお力添えできたのなら幸いです…！お返事も大変遅くなり申し訳ありませんでした！完結までどうぞよろしくお願いします！ (2020年5月4日 20時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
哀羅 - ずっと愛読させてもらってます！今一番思うことはとにかく！先が気になる…〔笑〕更新ゆっくり自分のペースで良いと思います！更新楽しみにしてます。これからも応援してます！ (2020年4月25日 11時) (レス) id: 11aacecd07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年5月25日 1時
