あの手 ページ9
(side You)
大きく手を振っていたクルーが見えなくなった。あんなに大きかったモビー・ディック号がアリぐらいに小さくなっても、私とラグナちゃんは手を振り続けた。そうしていないと涙が堰を切って溢れだしそうで、二人ともずっと手を振り続ける。
愛しい彼らと偉大な親父さまを乗せたその船は、地平線の彼方に消えていった。私達の思いなんてどこ吹く風、風はぐんぐん船を遠ざけた。
ようやく手を下ろしたラグナちゃんが静かに口を開いた。
ラ｢Aさん、私、あなたに謝らなくちゃいけないの｣
気まずそうにしぼんだ顔を見せる彼女。しかし私には思い当たる節なんか無くて、落ち込む彼女の顔を慌てて伺う。
『ど、どうしました？急に…』
ラ｢私、マルコに好きだって言ったの、好きだから、船に乗せていて欲しいって｣
俯いたまま重たい口を開く彼女は今にも泣きだしそうだ。この様子だとあまり宜しくない返事だったのかもしれない。泣きだしそうな彼女を慰めようと、何かないか辺りを見回す。近くに可愛らしい色合いのベンチがあった。
『えっ、と、ほ、ほら！あそこ！ベンチに行きましょう？船から美味しそうなリンゴを拝借してきたんです、ね？あそこに座って…』
今朝、キッチンからこっそり持ってきたリンゴをカバンから取り出す。艶のある赤色が美味しそうだ。ラグナちゃんの背を押してなんとかベンチに座らせる。彼女はまだ俯いて話を続けようとしていた。
ラ｢わたし、Aさんの事…こんなに…｣
とうとう肩を震わせ始めたラグナちゃん。一体どんな酷い断り方を…。
『ほ、ほら！忘れちゃいましょう？だってこんなに美味しそうなリンゴが目の前にあるんですよ？』
艶やかなリンゴを彼女の目の前に出すと零れそうなほど大きな目に涙を溜めた彼女が弱々しく受け取る。彼女は涙を溜めたまま齧り付いた。一口、また一口と食べ進めるとポロポロと涙を零す。
零れた涙を拭うとゴクリと飲み込んだ彼女がもう一度こちらに向き直り、なにか決心したように顔を上げる。
ラ｢ごめんなさい、私、言っちゃいけない事、言っちゃった…あなたの代わりに私を船に乗せていて欲しいって。私がそんな事言わなきゃ、あなたはまだ…｣
どんどん弱々しくしぼんでいくラグナちゃん。きっと勢いで言ってしまったんだろう。
『違うの、私はいつか船を下りることになっていたはず…だからそんな顔しないでください』
落ち込む彼女の頭を撫でると、驚いた顔を見せる。
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
