バース2 ページ40
(side Marco)
マ｢バー、ったって…こいつに酒注ぎでもさせるつもりかよい｣
最近は寄り付く島も無く退屈しているのは分かるが、あまりにも現実的ではない提案だ。第一、彼女がこの船を降りてしまっては成り立たないだろう。
『あの、私、バーで働いていたこと、あります…』
遠慮がちに小さく手を上げたのは他でもない目の前の彼女で、俺とサッチの顔色は逆行する。
サ｢じゃあ、カクテルなんかも作れちまうのか？｣
身を乗り出してサッチが彼女に詰め寄る。驚きつつも彼女が照れたような顔でコクリと頷くとサッチの右手が突きあがる。
マ｢いや、待て待て、お前にも帰る場所があるだろい。海賊船なんてさっさと降りろい｣
彼女からすれば海賊に良い思い出は無いだろう。野郎ばかりの船なんてさっさと降りて普通の女として暮らすのが幸せに決まっている。
サ｢あー、そりゃまあ、無理強いはしねえけどよ…行く宛はあるのか？そういや身の振りが決まってねえのはお前だけだったな｣
腕を組み口を曲げるサッチ。どうしても食い下がりたいらしい。チラリと彼女を見れば何やら物憂げに俯いている。この様子じゃ行く宛が見つからないのだろう。困った事になった。
マ｢…おい、故郷は｣
俯きがちに首が横に振られた。おおよそ海賊にでも襲われたのだろう。ますます今の居心地が悪いであろう環境に気が引ける。どうしたものかと頭を抱えた頃に、眉を上げるような提案が彼女の口から吐き出された。
『…ここに、居させてください』
下げられた頭が、小さく縮こまった肩が、一世一代とも思える言葉を呟いた口が、震えていた。こんなにもちっぽけな存在にここまで言わせるのかと、海の上とは違った恐怖を感じずにはいられなかった。
マ｢俺が言うのもなんだがな、ここに居たってお前は幸せになれねえよい。悪い事は言わねえ、陸に上がれ｣
いくら陸に平穏が無かろうが、彼女のような人間が欠伸をするような穏やかさは海の上では叶わないだろう。
『助けて貰ったから、何かお返ししたいんです』
消え入るように尻すぼみする声が精一杯の仁義を伝える。しかしまあ、男であればクルーとして受け入れる事もあるいは考えられるだろうが、ここまでひ弱な女となると扱いは別だ。
マ｢分かってやれねえ事もねえが…親父が許さねえだろうねい｣
サ｢美味い酒が飲めるってな具合で丸め込めるんじゃねえか？｣
サッチが諦め悪く食い下がる。さっきからこいつは何なんだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 115人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
