ありあわせ ページ37
(side Marco)
捕虜達の行き先が大体決まった。船を降りる人間がほとんどで、近くの海域の島へと下ろす予定だ。船に残るって人間も、帰る場所の無い数名だけで仕事が早く片付くのはありがたい。
問題はあの女だった。初日こそ笑顔を見せたりと親しげな雰囲気だったが、体調が回復してからというもの、どうにも警戒心が剥き出しになる一方だった。
当然だろう。少なく見積もってもここ数年は人としての扱いを充分に受けてこなかったんだ。初日の笑顔は生きる為の本能からなるものだったんだろう。
骨と皮のような体がようやく人間らしいものになってくるにつれて俺達との接触を避けるようになった。ナースなんかはまだマシで、俺達男が近づこうものなら脱兎のごとく逃げ出してしまい、埒が明かない。今日こそ話を付けなくては。
マ｢おい、出てこい、お前が出ねえと話にならねえ｣
いくら扉を叩いたところで返事ひとつ返ってきやしない。いい加減にしてくれと嘆きたいところだが、今の彼女の状態を無下にできない自分がいるのも確かなのだ。
マ｢…ハァ、分かった…何も話さなくていい、腹減ってんだろい｣
あの日から数日、運ばれてくる食事もまともの口にしないこの女を誘い出す文句はもうこれぐらいだ。
扉の奥で靴音が鳴ると、遠慮がちに扉が開かれる。中から気まずそうに俯いて出てくる彼女の名前を俺はまだ知らない。
マ｢…付いてこい。食堂にも自分で来いよい｣
気まずそうに腹を押さえて出てくるあたり、可愛くない我慢でもしていたのだろう。先に歩き出した俺を何も言わずに付いてくるのは合鴨みてぇで頬が緩む。
こいつに対して変に情を抱くのには慣れてしまった。どんなに鉄の意思を持ったところでこいつに面した時には頬が緩みきってしまうのはきっと、しばらく解けない呪いなのだと割り切った。
食堂までの長くて待つには短いこの距離を、彼女は苦痛に思うだろうか。俺がこの距離を惜しいと思うのに俺自身が気づくにはまだまだ時間が必要だった。
食堂へは案外すぐについてしまうもので、待ち構えていたサッチが満足そうに笑うのを横目に空いた席へと腰を下ろす。総勢1000人を超える人間が利用する食堂だ。昼時を過ぎた今の時間に居場所を探した彼女は俺の向かいへと腰を落ち着ける。
サ｢よう、腹減ってんだろ？何が食いてえんだ｣
座り込んだ彼女へと駆け寄るサッチはどこか嬉しそうで妙に胸がざわついた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 115人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
