嵐の中で2 ページ15
(side You)
ラ｢Aさん！こっち！｣
後ろにいたラグナちゃんが柵の隙間を指さす。体の小さな彼女ならなんとか通り抜けられそうだ。
『…！そこから出て！早く外に！』
大きく頷いた彼女は隙間から何とか抜け出し、近くにかけられた鍵で手早く檻の鍵を開けた。船員が降りてくる気配は無い。既に逃げ出したのだろう。
私たちもハシゴを上り甲板へと出る。巨大な嵐に小さな船は為す術なく揺さぶられている。壁を伝い、何とか立ち上がる。
とにかくこの嵐が止むまでやり過ごさなくては。沈み行くこの船からも脱出しなくてはいけない。
船の端に浮き輪を見つけたそのとき、一際大きな波が船を覆った。
ラ｢Aさんっ！！｣
咄嗟に手を伸ばす彼女がスローモーションのように見えた。私も必死で手を伸ばす。こんな時ばかりはバースプーンと1つでもあればと余計な頭が働くものだ。
伸ばした手は届かず、私達はバラバラに波に飲まれ、荒れ狂う海に叩きつけられた。海水が荒々しく体を包み、目の前が真っ暗になる。
ああ、死ぬんだ、ここで。
もう一度、もう一度だけ、あの優しい手で撫でて欲しかった。熱くて冷たい、大きくて繊細で、唯一無二の愛しいその手。女としての幸せを願ってくれたその人。こんなに早くに彼の思いを踏みにじる事になるなんて、来世でだって顔を合わせられないんだろう。
あまりにも間抜けな自分の運命を呪った。
体の中の空気が意識と一緒に抜けて行く。このままこの海に溶けてしまえば、いつか彼の元へと行けるだろうか。
いや、不死鳥の力と引替えに海に嫌われた彼だ。もうどうしたってあの手に触れる事は叶わないんだ。
海水に溶けたのは1粒の涙だった。
ーーーー
ーーー
(side Marco)
進路を引き返すモビーディック号。船内は異様な緊張感に包まれていた。ただの元船員と拾い人の為に引き返すなんて事は普通の船じゃ異例中の異例。しかしこの船は違う。白ひげの乗る船だ。Aもラグナも今だって俺たちにとっちゃ家族だ。
2人の報せを聞いた親父はこちらが提案するより先に進路を引き返し、2人を攫った船を見つけるよう指示を出した。
白｢お前ぇら俺の可愛い娘を必ず救い出せェ！｣
親父の指示にクルー達が奮い立つ。この船自体が何だかんだと2人との別れを受け止めきれていないのだ。
白｢グララ…マルコ、俺ァAの選んだ酒しか飲まねえぞ｣
親父のワガママはただの気まぐれか、それとも心を見透かしているのか。
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
