引く手 ページ50
(side You)
シ｢A！島に降りるぞ、出掛けよう！｣
船内から出てきたシャンクスさんは私を見つけるとすぐに歩み寄り肩を抱いて陽気な提案。脈絡もないその声に思わず眉を潜めた。
『嫌ですよ、シャンクスさん、目立つんだから』
ただでさえ人目を引く赤髪と精悍な顔立ち。四皇と知られればおちおち出店も見て回れないだろう。そんな窮屈な外出は願い下げだ。
シ｢良いじゃないか、好きな物を買ってやるぞ。何が欲しい？服か、髪飾りか？あ、悪いが男だけは買ってやらないぞ｣
流れる手つきで前髪が梳かれて、海風になびく横髪が耳にかけられる。この顔でこの仕草をやってのける彼には幾人の乙女が涙を流したことだろう。
『要らないです、これ以上何も』
ツツと上唇を撫でる指を腕ごと押しのけるとつまらなさそうに眉が下げられた。
シ｢磨かない女は衰える一方だぞ？｣
呆れたと言わんばかりに下げられた眉がやけにフランクなのは、それがシャンクスさんのものだからなのだろう。どうしたって憎めない人だ。
『どこの島に行くんです？』
私にそれを伝えるということは、それが少なからず私の所在に関わることだと気づく。私の問いに目の前の彼の眉が気まずそうに歪められた。
シ｢…お前の知らない島だ。美味い酒があるんだ。そこに着いてきてくれるか？｣
指先で頬を撫でながら急に目が細められる。その顔はどこか寂しげで、彼が遠くなる一方だった。
『お酒…目利きなら、任せてください』
命を拾い上げてくれた彼に、他に何か恩を返せるかと言われれば、そんなものは自分の中には見つからなかった。彼が望むものが私の中にあるのは、幸運なのか、それとも彼の気遣いなのか。
シ｢なあ、A。何か、昔の事を思い出したか？｣
未だ寂しげな目元の彼が問いかける。ここでどう返すのかで、何か今後の人生が大きく変わる気がして口が重たかった。
思い出す、その言葉で浮かぶのはやっぱり、あの一面の花畑と不思議な浮遊感だ。あの何物にも変えられない確かな感覚はきっと、過去の自分のものだろう。
この事を言う前に真っ直ぐにシャンクスさんの視線へと合わせる。ここでこの事を隠すのはきっと、未来の自分が後悔してしまう。
不思議な確信が彼にも伝わったのか、厳しい目元と固く結んだ口元が緩められた。
シ｢…そうか。なら仕方ない｣
私の腰を支えていた手が頭に乗せられる。雑に撫でつけられた後にその手は名残惜しそうに離れた。
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
