鏡 ページ35
(side Marco)
あれからホットサンドは俺の胃袋ではなく、どこに置いていたのか洒落たカフェみてぇな紙袋へと入れられた。
何となく残していたとはいえ、そいつを取り上げられた上に使い走りまでさせられるとは、捕虜なんて拾うんじゃなかったと溜息ばかりが零れてくる。
それでも手の中のホットサンドがただのサンドイッチになってしまう前にと足が動く。自分が随分と老いてしまったように思えて気分はあまり良くない。
恐らく彼女はナース達の部屋にいるだろう。この短時間で往復することになるとは…
マ「とんだ疫病神だよい」
食堂からの長い道のりは男たちのざわめきと女の高い声とのグラデーションだ。段々と濃くなる高い声は楽しげに響いていて、不思議と香り立つ気がしてくるから女ってのはつくづく不思議な生き物だ。
楽しげな声が響くその部屋の扉を叩くと、高く鳴っていた音が静かになる。扉を開いたのは先程彼女を連れて行ったナース長だった。
ナ「あら、マルコ隊長、どうされました?」
マ「いや、ちょっとねい…あの細っこい女はいるかい?」
本日2度目のこの部屋だ。数名のナースがクスクスと笑う。
ナ「ああ、それなら…」
そう言って視線を送る先には部屋の中央で珍しい物好きのナースたちに囲まれたあの女が縮こまっていた。シャワーでも浴びたのか、少し火照った顔でお古を当てられる彼女は困ったような顔で周りを見ている。
マ「やっぱり…怖がってんじゃねえかい」
ナ「そんなことないですよ、女の子はいつでも綺麗になるのが好きなんですから」
マ「それよりまずはメシだ。これ、食わしてやっといてくれよい」
そう言い紙袋に包まれたホットサンドを手渡そうとすると気の利かないのか利きすぎるのか、すっとぼけた提案をしやがる。
ナ「お顔見がてら渡してきたらどうです?」
マ「は、なんで俺が…」
ナ「ふふ、お顔に書いてますよ、あの子に構ってあげたいって」
思わず自分の口元を手で覆う。指先で口の端をなぞるとなるほど、いつもより上がっている気もしないでも…
マ「ん、なわけねえだろい」
口元を押さえつつ視線を外すと面白がったナース長がホットサンドごと俺の手を引き部屋の中央へと連れていく。
彼女に群がっていたナース達が珍しそうにこちらを見てはクスクスと笑い出す。畜生、何だってこんな…
マ「あー…ほら、食えよい」
何故か合わせられない視線のまま手渡すと、彼女の細い指がそれを受け取る。
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます!!過去編もうちょっとだけ続くと思われます!これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです!! (2019年5月13日 23時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか!過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい! (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ!ありがとうございます!とっても嬉しいお言葉…!感無量です!ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます!これからもどうぞお付き合いください! (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください!続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…(;∀;)少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります!!これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います! (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:がまお | 作成日時:2019年3月15日 15時