陶酔2 ページ24
(side You)
先程まで甲板で騒いでいた彼の手はひんやりと冷えていたが、私を捉える瞳はお酒の力も相まって熱を帯びる。
『そんな、勝手な事言わないでください』
シ「勝手か…それもそうだな。だが、俺は砂浜に倒れていたお前を見つけた時に確信した」
ボトルから手が離されひんやり冷えた指先が絡まる。
シ「あの船からお前を奪うにはどうしたものかと思っていたが…お前は今こうして、俺の船で俺に酒を作っているじゃないか」
あの船、とは一体何なのか。私はどこかの船に乗っていたのだろうか。
手に取った私の指を眺めて目を細めた彼は子守歌でも歌うみたいに優しく言葉を漏らす。
シ「俺とお前は幾度の出会いをした仲だ。この広い海の上で。だがそんなものは思い出さなくていい。この船に乗ってここで花みてぇに笑っていろ」
私にしてみればそれは脅迫じみた誘い文句だ。丁寧さの欠片もない言葉で、今の私には拠り所はここだけ、彼だけなのだ。
『…嫌、です。この船には居られません』
シ「ここを出てどこに行く?身寄りも金もろくにないお前が、この時代でどうやって生きていくつもりだ」
海賊や人攫いが横行するこの時代において陸の上でも海の上であってももはや安寧の地は無いだろう。身寄りのない女や子供は格好の餌食だ。
この気迫。彼はきっと名の知れた海賊なんだろう。彼らといれば何かと救われる事もあるのかもしれない。
そう思う度に、頭の片隅で誰かが手招きする。
忘れてはいけないはずの人、そんな気がしてならないのだ。
シ「そうか…よし、いいだろう。それなら俺はお前がここに居たいと思わせよう。それでどうだ?」
熱を帯びていた瞳がおどけたものへと変化した。クッキーの残り一欠片を賭けてでもいるような口ぶりから相当な自信が伺える。
『どうしてそこまで…?私なんて置いていても、腹の足しにもなりませんよ』
シ「足しにならなるさ!喜べ、この船じゃあ紅一点だぞ」
『海賊船で紅一点ですか…今すぐ降りたくなってきました』
なんて恐ろしい提案だろう。身震いが止まらない。
シ「ここにはお前のファンも大勢いるぞ、両手両足見渡す限り花だらけだ」
果たしてあの屈強な男達を花と呼んでもいいのだろうか。彼らに囲まれる日々を想像して一層震えが増す。
『遠慮させてください…』
おずおずと頭を下げると彼は上機嫌に笑い出す。
シ「安心しろ、手は出させない」
下げた頭を無骨に撫でられた。
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます!!過去編もうちょっとだけ続くと思われます!これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです!! (2019年5月13日 23時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか!過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい! (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ!ありがとうございます!とっても嬉しいお言葉…!感無量です!ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます!これからもどうぞお付き合いください! (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください!続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…(;∀;)少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります!!これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います! (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:がまお | 作成日時:2019年3月15日 15時