あ、黄金じゃない方のマンネです ３

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SideSH

『でもやっぱり僕、わからないです』
SH「何が？」

『ヒョン達は、僕の周りの人たちは僕に、自分らしくいろっていうんです。でも、自分らしくっていうのもまだよくわかってなくて』
SH「自分らしく、か」

『今までの舞台や、お芝居は、僕はただ体を貸していただけなんです。今日の撮影も』
SH「体を貸す、っていうと？」

『こんな感じ、って台本を読んで感じたその役に、身を預けるんです。だから僕自身が何か考えてるわけじゃないので、体を貸す、っていう感じ？』
SH「..........じゃあさ、A。今日のシウの撮影、どうして何度も止められたと思う？」

『それがよくわからないんです。監督が言葉で説明してくれたコンセプトも雰囲気にも添えてたと思うんですけど』
SH「.........じゃあお前、シウを演じてて、自分ならこうするのになあ、とか疑問に思ったこととかないの」

Aが一本飲み終えたのを見て焼酎に切り替える。サイドテーブルのグラスに注いでやると、クイッと軽く飲み干した。

『考えたこともないですね。シウは僕じゃないので』


本当に何も考えないでやってるのか。天才を通り越してイライラしてきたぞ。

SH「............正直言って、俺お前とやってて、つまんないな、って思うことあるよ」
『え』

SH「なんか張り合いがないんだよなあ、何言われても本の中の登場人物に話しかけてるみたいで」
『だ、だって本当に本の中の登場人物じゃないですか』

SH「違うだろ。だったらそんなの、書いた本人かロボットにやらせときゃいいんだ。俺たち人間が、誰か違う人間を演じるってことは、その人にしかできない役の解釈があって、その人にしか表現できない役が出来上がるもんなんだよ」
『................』

SH「お前らしく、とは言わない。でも、お前はもっと、個人的になっていいんだ。お前を求める人間には、お前の思いを聞くくらいの責任はあるんだ」
『僕の思いを聞く、責任なんて誰にもないと思いますけど』

SH「なんでだよ、好きで追っかけてる人間の言葉も聞かないでただ追っかけてるやつは全員ストーカーっていうんだ。お前は自分のファンをストーカーにしたい？」
『それはダメ』

SH「だろ。別に無理に理由を作る必要はないと思うけどさ、監督は、今回お前ならできると思ってキャスティングしたんだ。どんだけ芝居に興味がなくても、今お前は俳優として仕事してるんだから、ちょっとは考えてみろよ」

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