Drunken Whale (ページ28)

今日:8 hit、昨日:5 hit、合計:120,672 hit

赤髪の男6 ページ28

(side You)

？｢おいおい、物騒だな。なにもそこまで怒る事じゃねえだろう。香りは元の酒そのものだぜ？｣

男｢中身が水じゃ意味ねえだろ！くそっ、ぶっコロしてやる！｣

男は物騒な事を言いながら赤髪に切りかかる。が、赤髪はするりと避けて相手の腕を片手でひねり上げる。

『すご…』

見事な身のこなしにその場にいた全員が息を飲んだ。赤髪の口元から笑みが消える事は無い。

ひねり上げた腕を掴んだまま男を放り投げる赤髪。そのままツカツカと男達の前まで歩み寄る。

男｢ち、ちくしょう！やっちまえ！！｣

その声を合図に一斉に赤髪へと群がる男達。さすがにヤバい。私も何か…

こんな時ばかりは自分の非力さに虚しくなる。自分を助けてくれた人ですら守れないなんて。

うろたえてうっかり樽から手が離れる。気づいた時には既に遅く、樽はゴロゴロと勢いを増しながら坂を転がり落ちていく。

こ、これは、なんだか見た事のある光景…

必然のように小石の上を転がり、大きく跳ねる酒樽。ラム酒がぎっしり入り容積を増した樽は陽の光を浴びて高く、早く飛び上がり…

男｢う、うわあぁっ！！！｣

男達をなぎ倒した。

赤髪に群がった男達はひとまとまりで地面に伸びている。中央にいた赤髪はどうやら無事だったらしい。ぽかんと口を開けて私の方を見ていた。

『…み、皆さん、大丈夫ですか……？』

もちろん返事はない。やってしまった…。

いたたまれずに黙り込む私。長い沈黙を破ったのは

？｢だっはっは！！よくやった！お前は狙撃の名手だな！！｣

呑気な赤髪の笑い声だった。腹を抱えて笑う赤髪。

？｢よし！気に入った！お前、俺の船に乗れ！一緒に世界を見て回ろう！｣

赤髪は私の肩を抱き勝手な事を言ってのける。

『ええっ！それはダメですよ！お断りします！』

？｢いいじゃねえか！旅は怖いか？俺たちゃそんなに弱くねえ、お前ぐらい守ってやるよ！｣

『いや！そういう問題ではなく！』

何を言っても引かなそう。これじゃあ男から助けてもらったのかなんなのか分からなくなってくる。

？｢ははっ！まあ1度俺の船に来い！今日は宴だ！｣

『だから行きませんってば！』

？｢なんだ、硬いことを言うな……ん？お前、その腕輪、よく見せてみろ｣

赤髪がようやく私の左腕に気づく。腕を取られてまじまじとブレスレットを見詰めた赤髪は、急に納得したように私の腕を離した。

？｢…へえ、面白い女だと思ったが、そういう事か｣