Drunken Whale (ページ23)

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赤髪の男ページ23

(side You)

『うーん、ちょっと買いすぎちゃったかなあ』

手を置いたのは先程酒屋で買ったみんな大好きラム酒ひと樽。味見をしたが中々の上物でひと樽2000ベリーという破格で売られていると知ると、後先考えずに買ってしまった。

正直、船の上で持て余すことは無いだろうが、問題はどうやって船まで運ぶかだ。いつもは誰かしらが調達を手伝ってくれるが、今日はあいにく皆手がいっぱいらしい。活気づいた街で女ひとりでも買い物に行けるだろうと1人で出てきたが、すぐに後悔することになった。

『仕方ない、転がして行こう。』

中身の事を考えるとあまり転がしたくは無いが、私の腕力では船まで運ぶ自信が無い。

『ごめんよラム酒！』

ゆっくり横に倒してそのまま転がす。昼前で幸い人通りも少ない。行き交う人にぶつからないよう慎重に運ぶ。

樽を転がす私の左腕には、白ひげのマークが彫られたブレスレットが陽の光を浴びてキラキラと輝いている。先日みんなを代表してマルコ隊長から頂いたものだ。みんなと同じように白ひげ海賊団として街に出られるのはすごくすごく嬉しい。思わず背筋がしゃんと伸びる。

みんなが私を家族として認めてくれた証。

大好きな家族達が私の持ち帰る酒を美味しそうに飲む姿を想像して頬が緩んだ。早く帰ってみんなに振る舞いたい。

この緩やかな下り坂を下りて街を抜ければ船まで一直線だ。次第に早足になった途端、樽が小石の上を転がる。

『わわっ、待って！』

軽く跳ねた樽は独りでに転がり、下り坂で勢いを増す。追いかける私の声も虚しく樽は転がり続け、ついには

『あっ！危ない！！』

男｢うわぁっ！！｣

見ず知らずの住人にぶつかってしまった。

『ごごごご、ごめんなさいいっ！！！！大丈夫ですか！！？』

慌てて駆け寄り頭を下げる。見る限り大きなケガは無さそうだ。

男｢なんだお前！気をつけろよ！！｣

『本っ当に！！すみません！！』

一歩間違えれば大ケガに繋がる。たまたま相手にケガは無さそうで本当によかった。必死に頭を下げる。

男｢ったく！…ん？ちょっとあんた、顔上げなよ｣

『は、はいっ、すみませんでした…』

おずおずと顔を上げた私をじっくり見詰める男性。顔を覚えて復讐でもされるのだろうか…

男｢へえ、なかなか可愛らしい顔してるな…今回は許してやるよ｣

私の顔を値踏みした男性は自分の顎のあたりを撫でながらにやりと笑った。