Drunken Whale (ページ25)

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赤髪の男3 ページ25

(side You)

男｢へ、へへっ、そこまで言うなら仕方ねえ…気をつけろよ女！｣

目の前で数百万の酒が行き来し、思わず喉が鳴ったがぐっと堪える。もう私の人生であれに巡り会うことなんて無いだろう。

酒を大事に抱えた男はすぐにどこかへ立ち去った。赤髪の男のおかげで私は身を売らずに済んだのだ、まずは感謝しないと。

『あのっ、ありがとうございます！助かりました…でも、あのお酒、すごく高いものなんですよ、本当に良かったんですか？』

？｢ああ、良いんだ…ありゃあただの水だからな｣

赤髪の男はいたずらっ子みたいに笑ってそう言った。

『…へ、水？でも確かに水色で…』

？｢あの瓶は空っぽでも水色さ、中身は俺と仲間が飲んじまった！｣

ガハハと笑い｢さあ、とっととズラかろう。奴が気づいちまう｣と赤髪の男は私の樽を易々と抱えて港へと歩き出した。

『わ、待って！』

歩き出した男を追いかける。男はなんと片腕で樽を抱えている。ついギョッとしてしまった。

『私も持ちます！それ、重いですよね』

？｢なんて事ねえよ、こんなもん。俺はそんなに軟弱そうか？｣

樽を抱える右腕に手を伸ばすと、すっとかわされる。

『い、いえ…でも』

？｢それよりこの酒、少し分けてくれないか？｣

『少しでよければ…』

この酒は家族に飲んでもらおうと買った酒。あまり渡したくはないが恩人に失礼はできない。

？｢そうか！いやあ、いい事もたまにはしてみるもんだ！｣

また楽しげにガハハと笑う男。この笑顔を見ていれば、なんだかどうでも良くなってきて自然と笑いが込み上げる。

『あの、先程は本当にありがとうございました。すごく、助かりました』

？｢なに、樽を転がすあんたがあんまり危なっかしかったんで気になって見ていたんだ。それにしても見事な狙撃だった｣

『うっ…』

楽しそうに私をおちょくる赤髪の男。あまり性格はよろしくないらしい。

？｢それより、この酒はあんたが？｣

『いえ！仲間に飲んでもらいたくて…』

？｢ほお！仲間か！あんた旅の者か？｣

旅の者と言えばそうなのかもしれない。

『そう、ですかね？』

？｢俺に聞いてどうする。ふふ、面白い奴だ｣

赤髪の男は酒の詰まった樽なんて抱えていないみたいにサクサクと歩く。むしろ私に合わせて歩くぐらいで紳士的だ。

『あなたは、この島の住人ですか？』

？｢いや、俺は…そうだな、俺も旅の者みたいなもんさ｣