005 ページ5
.
剣道は苦手だ。
理由は分からない。
運動神経は良いと自負しているのだが、剣道は妙に苦手だった。
私の練習の姿を見た諸伏くんは困ったように眉根を寄せ言った。
「笠崎は射撃の選手なんだから、剣道なんて必要ないんじゃないか?」
「…下手と?」
「まあ下手だね」
「というか私、オリンピック出ないから」
「え、出ないの?六年前に出場して銀メダル取って、二年前は金。二年後は二連覇がかかってるじゃないか」
「私がなりたいのは警官で金メダリストじゃないから」
「変わってんな〜」
「警官になりたくて射撃始めたけど、機動隊になるなら剣道しとくんだった」
「なんで機動隊?」
「…秘密」
「ふ〜ん。警官になりたくて剣道教えて欲しいなら、降谷に教えを乞うことを薦めるけどな」
「それはちょっと…」
「なんで?」
すっと俯く。
面を着けたままで良かった。顔が赤いとバレてないだろうか。
「降谷が射撃で上位だったからとか?それなら笠崎が警官になりたい気持ちってその程度なんだな」
「警官になりたいから教えて貰わないのよ」
意味が分からないと、諸伏くんは顔を顰める。
「……好きな人に教えて貰ったら、集中できない」
しばしの沈黙。
チラリと諸伏くんを見れば、天を仰ぎ手で目を覆っていた。
「え?何、何?」
「尊いってこういう意味か?」
「は?」
「分かった、俺が頑張って教えるから。コサックダンスみたいなすり足も何とかするから」
「コサックダンス………じゃなくて、言わないでよ?秘密よ?」
「約束だ!」
何故か涙を流しながら爽やかな笑顔で親指を立てる諸伏くんに、正直に話した数秒前の自分を呪った。
(変な人…)
あまり関わらないでおこうと誓ったのだが…
「笠崎が剣道を身に着けたら、降谷をデートに誘えよ」
「は、え、なんで?」
「師匠命令だ」
「師匠?というか伊達くんが帰ってくるまでの数回でしょ?」
「伊達がお前の剣道見たら、足が擦り切れるほどすり足の練習だぞ」
「…」
「俺なら論理的に教えられる!」
「よろしくお願いします」
こうして私は諸伏くんの弟子になった。
.
1308人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
世界の髪飾り(プロフ) - すっごく面白かったです…ありがとうございました! (2019年5月21日 20時) (レス) id: c72ec400e1 (このIDを非表示/違反報告)
四面楚歌(プロフ) - 完結、おめでとう御座います!楽しく読ませて頂きました! (2019年5月19日 9時) (レス) id: 0dcecdf2b2 (このIDを非表示/違反報告)
堰白(プロフ) - 完結おめでとう御座います、とても面白かったです! (2019年5月18日 22時) (レス) id: 232eaea278 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - とても面白く見させていただきました!!ありがとうございました!!! (2019年5月18日 20時) (レス) id: 008e34b9a1 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - 美咲さん» とっても嬉しくて、何度も何度もこのコメント読んでました(笑)執筆頑張ります(^^)ありがとうございます(∩´∀`∩) (2019年5月9日 17時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年5月4日 20時