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降谷
「大丈夫なの？」
笠崎はそわそわしていた。
それもそのはず。カードキーを盗まれたと喚く取締役と従業員がこの14階にやって来るからだ。
もしカードキーを持っていることがバレたら…。
それを案じているのだろう。
エレベーターの階数表示が10の数字を光らせる。
「僕を信じろ」
「顔見知りなんだからこのままだと疑われるじゃない！」
「何事もなく此処から立ち去る。僕はプロだぞ」
階数表示が12を指す。それと僕を交互に見ながら、彼女は問いかける。
「どうするつもり？」
「僕に抱き着け」
「は？」
目を見開く笠崎に僕は手を広げる。
「来い」
階数表示は13。
それを見た笠崎は飛びつくように僕に抱き着いた。
顎に指をやり上を向かせる。
赤く染まった唇に噛みつくようなキスをする。
「んんっ？！」
唇を塞いだ瞬間、笠崎はくぐもった叫び声を上げた。
その時、エレベーターの扉が開き取締役の怒鳴り声がした。エントランスに響く声はすぐ納まる。
舌を貪り、笠崎の太股を掴んだ。舌と足を絡め挑発するように取締役を見た後、さぞ今気が付きました。と言うように、唇を離す。
「や、やだな。いらっしゃったら言って下さいよ」
「あー…すまない。驚いて」
「お部屋でお休みですか？」
「あ、否。実はカードキーが盗まれたようで」
「盗まれた？それは困りましたね…体の隅々まで探しましたか？」
探るようにポンポンと体を叩いた。それがお気に召さなかったのか、取締役は腕を払う。
「俺を疑うのか？」
「いえ。ただ人は誰しも固定観念が付きまとうものですし。おや、足元に何か」
そう足元を覗き込む時、取締役の内ポケットからカードキーが滑り出た。
従業員の顔が険しくなったところで、笠崎とエレベーターに乗る。扉が閉まる直前、あたふたする取締役の姿が見えた。今頃、取締役はペコペコ頭を下げていることだろう。
扉が閉まると笠崎は僕から手を放した。
何も言わず、ムッと唇を曲げて鞄の中身を探っている。
笠崎を口説くあの取締役に腹が立った。捜査上の恋人ではあるが、今笠崎は僕の恋人なのだ。だからわざと彼の前でキスをする方法を選んだ。
その代償で僕は笠崎に嫌われただろう。
それでいい。
僕は彼女は作らない。
すると笠崎は鞄からハンカチを取り出し、僕の口端を拭った。
「口紅がついてたら、色男が台無しよ」
嗚呼、この関係がずっと続けば…。
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世界の髪飾り(プロフ) - すっごく面白かったです…ありがとうございました！ (2019年5月21日 20時) (
レス) id: c72ec400e1 (このIDを非表示/違反報告)
四面楚歌(プロフ) - 完結、おめでとう御座います！楽しく読ませて頂きました！ (2019年5月19日 9時) (レス) id: 0dcecdf2b2 (このIDを非表示/違反報告)
堰白(プロフ) - 完結おめでとう御座います、とても面白かったです！ (2019年5月18日 22時) (レス) id: 232eaea278 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - とても面白く見させていただきました！！ありがとうございました！！！ (2019年5月18日 20時) (レス) id: 008e34b9a1 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - 美咲さん» とっても嬉しくて、何度も何度もこのコメント読んでました(笑)執筆頑張ります(^^)ありがとうございます(∩´∀`∩) (2019年5月9日 17時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：豆腐戦士
| 作者ホームページ：
作成日時：2019年5月4日 20時
