彼女には彼がいる【赤葦京治】 (ページ2)

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「Aを合コンに誘ったんだって？」

練習着を着替えていると、ニヤリと口角を上げた木葉さんがそう言った。

俺がAさんを好きなことを、木葉さんはどこで聞いたのか、知っている。誰にも相談していないから、俺の行動を見て察したのだろうか。

「どこで聞いたんですか？」

「米沢がAに合コンに誘われたんですけど参加していいですかって丁寧に聞いてくれた」

「…」

「何その嫌そうな顔は」

「いえ…」

「イケメンは性格も完璧だったんだな」

「木葉さんは性格がねじ曲がってるから、イケメンじゃないんですね」

「俺の目の前には顔だけ良い奴がいるんだけど」

「え、誰ですか？」

「言わねえよ！！」

ふと、部室の窓に目をやった。外ではせっせとタオルを干すAさんの姿が見える。

もう既にAさんを思い続け一年が経った。進展はなく、米沢と共にいるところを指を咥えて見ている一年だった。

当時はそれで十分だと思った。けれどAさんと共に過ごせば過ごすほど、好きの気持ちが膨らんでいって、俺の為に笑って欲しいと独占欲が芽生えてきた。

合コンに誘うよう言ったのは、木葉さんだ。

彼曰く、

「赤葦のことだから自分から趣味とか私生活のこととか聞けないだろう。だから第三者を通じて知ればいいじゃん」

Aは可愛いから、男なら進んで話したがる。

とも言っていた。

「その中の誰かと恋に落ちちゃったらどうするんですか」

「米沢麻緒がいるから、それはないだろ」

その発言は支離滅裂だ。

ならば合コンに誘って、Aさんの趣味やら何やら探ったところで俺の所には来ないということではないか。

けれど米沢抜きでAさんと飲み会をしたかったのは本音。合コンなら、米沢を連れて来ることはないかもしれないと思った俺が甘かった。

バレー部の活動でも飲み会は行われるが、その時は木兎さんのお世話係というのが俺の暗黙の役割になっていて、とてもじゃないがAさんとゆっくり飲める余裕がない。

「あれ、俺の周り邪魔者ばっかじゃないですか？」

「赤葦、それ考え出したら終わりだぞ」

「うおぉぉぉ！あかーし！夕練は残って100本トス上げてくれ」

「嫌です。それに後輩達は、昨日木兎さんの練習に付き合ってヘトヘトなんです。未来の主将なんだから、部員の体力も考えてあげて下さい」

「よ－し！じゃあ今日は体を休ませろ」

「赤葦、お前本当に天才だわ」

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