・ ページ28
＊
声が聞こえた。
いや、ほんとは声らしい声なんて聞こえないけど、服の裾を掴まれて振り返ったら、かなしい、寂しい、って、テヒョンさんの声が聞こえた気がして。
完全に思い上がりだとわかってたけど、テヒョンさんの顔があんまりにも必死だったから、こんなたくさんの日の前で注目されて、私もどうしていいかわかんなくて、電話番号を喋っていた。
バカだと思った。どんな勘違いファンだ、と。
でも、電話番号を言ったらテヒョンさんの手が離れたから、その隙に逃げるように会場を出て行った。
後から友達が追いかけてきて、多分どうしたのかと聞かれたけど、答えられなかった。涙が滲んでどうしようもなかった。
ただ応援できるだけでよかったのに、なんで、あんなこと。
こんなの、勘違いした気持ち悪いファンだ。
あの時なんで電話番号なんて言っちゃったのかわからないけど、でも勝手に、これを言わなきゃ、って、あの時。
リア恋、と言った友達の言葉が今更思い出される。
そんなんじゃないって思ってたのに、こんなに苦しいのは、私が、本当に。
そんな不毛なこと、したくなかった。絶対にかなわないってわかってるのにやめられないこんなもの、いいことなんかないのに、苦しいだけなのに、自覚したくなかったのに。
ようやくわかった。今日、こんなにサイン会に来るまでに迷ったのは、この気持ちを自覚しないためだったと。
友達は会場の外でボロボロ泣く私の肩を、背中を、さすってくれた。何か言ったのかもしれないけど、顔を見れないからわからなかった。
明日も仕事があったから、そのまま空港に向かって、すぐに日本に帰ってきた。瞬く間に現実に戻って、友達と別れて、家について、倒れこむように眠った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1055人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みうみう(プロフ) - 途中で何度か泣きそうになりました。ふたりの続きが読みたいです！公開される日を待っています (2022年12月18日 14時) (
レス) @page50 id: 1630532606 (このIDを非表示/違反報告)
さちか(プロフ) - 初めまして！すごく面白くて一気に読んでしまいました！パスワードはどうしたら教えていただけるのか知りたいです！お願いします！ (2022年1月4日 17時) (レス) id: 5256a55c8d (このIDを非表示/違反報告)
みらの(プロフ) - すみません！誤字りました！気になるのですが、パスワードってどうやったら教えていただからのでしょうか？ (2021年10月25日 22時) (レス) id: 5afcca0842 (このIDを非表示/違反報告)
みらの(プロフ) - こんにちは！凄く面白くてすぐ読んでしまいました！続きが鬼になるのですがパスワードを教えていただいてもいいですか？ (2021年10月25日 22時) (レス) @page50 id: 5afcca0842 (このIDを非表示/違反報告)
Dtpnjtwtvmt(プロフ) - 続編がパスワード……オーマイガーどうしよう (2021年10月12日 2時) (レス) @page50 id: e5b6025cac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すばる | 作成日時：2020年7月2日 18時
