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ファンの列が途切れて、マイクはどこか、と左右に目をやった時、一瞬、香りがした。
知ってる匂いだ。でも、とっても久しぶりの。これは、これは、これは。
思わず手を伸ばしてしまった。
幻覚だとしても、捕まえなきゃならない、と。
「テヒョンア、何してんだお前」
「ホソギヒョン、ちょ、あの、この子、」
「いいから手離せ、何してんの」
ヒョンの表情がスッと冷たくなる。
「や、違、あの、」
「何、ふざけてんなら、」
言葉になんてならない。なんて言えばいいかわからない。でも、この手はもう離せない。
そのうちスタッフがその子を俺の前に押しやって、ホソギヒョンは納得いかない表情をしながらも次のファンに何事もなかったかのように笑顔を向けた。
「....................」
「....................」
聞きたいことはいっぱいあった。言いたいことも。でも、何から離せばいいかわからなくて、強く握りしめ過ぎてた腕を緩めると、女の子が顔を上げた。
「..............前、にも、あいましたよね？」
「......................はい」
話しかけて、さらにわからなくなった。韓国語が、言葉が通じる。耳は？聞こえないのはやっぱり嘘なのか？
「あ..........耳、」
「ああ、唇の動きを読んでるんです」
そう言って髪に隠れた耳を見せてくれた。そこには、肌色の機械がついている。
「あ、な、」
名前は？と聞きかけて、ぐ、と喉がしまったような感覚。
名前、を、知るのか？この子の？
「？」
この子の名前を知ってしまったら、本当にこの子を忘れられなくなる。さっき、忘れるって決めたはずなのに。
やっと会えたのに、会えたからってすべてがうまく行くわけじゃなかった。会えたからってなんだ。会えたからって、俺たちは交わらないのに。
「..................っ」
あんなに会いたかったのに。会えた今は、手も足も、出ない。
「テヒョンさん、」
「っ」
「私、あなたに会いたかったです」
顔を見れば、黒と茶色の間に揺れるような瞳が、まっすぐにこちらを見ていた。
俺だって会いたかった。きっと君よりももっと、会いたかった。
会いたかったよ。そう言えたら。言いたい。会いたかったって。
他の子に言うのは息をするより簡単なのに、どうして。
この子に本当に言いたいことを、俺はまた、逃して。
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みうみう(プロフ) - 途中で何度か泣きそうになりました。ふたりの続きが読みたいです！公開される日を待っています (2022年12月18日 14時) (
レス) @page50 id: 1630532606 (このIDを非表示/違反報告)
さちか(プロフ) - 初めまして！すごく面白くて一気に読んでしまいました！パスワードはどうしたら教えていただけるのか知りたいです！お願いします！ (2022年1月4日 17時) (レス) id: 5256a55c8d (このIDを非表示/違反報告)
みらの(プロフ) - すみません！誤字りました！気になるのですが、パスワードってどうやったら教えていただからのでしょうか？ (2021年10月25日 22時) (レス) id: 5afcca0842 (このIDを非表示/違反報告)
みらの(プロフ) - こんにちは！凄く面白くてすぐ読んでしまいました！続きが鬼になるのですがパスワードを教えていただいてもいいですか？ (2021年10月25日 22時) (レス) @page50 id: 5afcca0842 (このIDを非表示/違反報告)
Dtpnjtwtvmt(プロフ) - 続編がパスワード……オーマイガーどうしよう (2021年10月12日 2時) (レス) @page50 id: e5b6025cac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すばる | 作成日時：2020年7月2日 18時
