3 ページ9
SIDE JK
ついに来た。今日、僕たちはデビューする。
もっとかっこいい言い回しでも思いつけばいいけど、生憎そんな頭脳も余裕もない。僕らは今舞台裏で出番を待ってる。事前収録を少し前に終わらせてるから、ここは今日二度目。ドン、ドン、と腹の底に響く大音量のビートが鼓動と一緒になって気持ちを急かす。
早く、はやく、もう一度あの舞台へ。怖い。行きたくない、行きたい。
そわそわと足踏みをする隣で、Aはぼうっと突っ立っている。
JK「A、どうする、本番だよ」
興奮した気持ちが口調にも現れているのを自分でも感じる。Aの表情を見ると、強張るどころか汗ひとつかいていない。
『どうする、って、やる以外ないじゃん。てかさっきも来たじゃない、ここ』
全く冷静にそんな言葉を返すから、こっちがキョトンとなってしまう。強がっているのかと思ったけど、表情には本当に緊張なんて微塵も感じられなくて、7センチ上から見下ろす視線は相変わらず信じられないレベルで綺麗だ。
舞台裏が暗いのもあるけど、化粧をしたAは本当に、絶句するほどのクオリティだ。
セットされてゆるくウェーブする前髪から覗く瞳。濃いアイメイクも全く違和感がなくて、むしろ素材がいいせいか僕らのメイクより様々な手法が試されていて濃いはずなのに、それを全く感じない。メイクに顔が勝ってる、とでも言えばいいのか。
JK「なんだよ、緊張しないの?」
普段練習ではできないことが多くて小さくなってる印象が強いせいか、ここで強気なAを見るのは変な感じだ。
『僕を見て』
JK「え?」
『僕、小さい頃から当たり前に注目されてた。…………でも、足りない』
舞台袖から漏れる照明が、Aの顔を片方だけ強く照らしている。強すぎる光で照らされる顔はただの光と陰になる。澄んだ声はどこまでも冷静で、それが逆に恐ろしくも聞こえる。
『僕を見て、もっと見て、って。…………僕は僕を、あそこに放り出すだけなんだ』
す、とAの細い指がまっすぐ舞台に向けて伸ばされる。Aの表情は見えない。
『行こ』
曲が止まっている。MCが僕らの名前を呼んだ。
1965人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
watanuki - すばるさん» まだ始まったばかりだけど、採用していただきありがとうございます!もうワクワクが止まらない笑笑 (2019年7月23日 19時) (レス) id: 398ac4b0d3 (このIDを非表示/違反報告)
すばる(プロフ) - watanukiさん» リクエストありがとうございます!女体化楽しそう....! (2019年7月22日 13時) (レス) id: 7eb248740d (このIDを非表示/違反報告)
watanuki - リクエストいいですか?主人公が女体化する内容が見てみたいです(?)。あと、このお話ものすごく楽しませてもらってます!あ、その女体化した時の身長はジミンちゃんくらいがいいです。170近く?まあ超えるくらいがいいです。よろしくお願いします! (2019年7月22日 7時) (レス) id: 398ac4b0d3 (このIDを非表示/違反報告)
すばる(プロフ) - (名前)さん» 早速ありがとうございます!演技のお話考えてみますね!! (2019年7月15日 23時) (レス) id: 345011fa2c (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - やっぱり演技の話見てみたいです! (2019年7月15日 23時) (レス) id: 993ddb6aa8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すばる | 作成日時:2019年5月21日 23時