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SIDE MG
正直、あまり期待はしていなかった。
MVの撮影のときですら、ダンスの動きを覚えられなくて苦戦した記憶があるし、顔だけで選ばれてるのは目に見えてる。でもだからこそ戦法も期待はあまり高くないと踏んでこの仕事を受けてるから、気負いもないけれど。
MG「んじゃ、頑張ってこい」
一通り関係者に挨拶をさせて、早速撮影。
役柄はありがちな学園恋愛ドラマの当て馬。顔が良すぎて、ヒロインは好きにはなるものの、結局は自分のままでいられる正規ヒーローを求める、というシナリオだ。あまりウエイトの重い役じゃないし、今回の演技が不評ならこの一回で出番が終わる。Aもそのことはわかっていると思うし、緊張しているようにも見えないから、軽くセットへ送り出す。
『はーい』
当の本人は台本もカバンに入れたまま、カメラの前に進み出ていった。セリフは微妙と言っていたくせに、その歩みは堂々としている。
「じゃあまず、一回やってみようか。緊張しなくていいから、リハーサルのつもりで」
監督が初仕事のAを気遣ってそう言うが、Aはセットの教室に入った瞬間、流石に緊張したのか黙ってしまって返事もしない。
「ようい、はいっ!」
スタッフの声でカメラが回る。スタジオ中のの無数の画面がAの足元から顔面までのカットをアップで映している。
思わず手元に持ってきてしまったAの台本をめくる。はじめのセリフはこのカットの直後。流石にこちらも緊張してきた。
小道具の教科書を持ったヒロイン役の女優もセットに現れ、シーン撮りが始まる。
Aはこの女優とぶつかって、ソレが出会いのきっかけになる。
「“っあ、ご、ごめんなさい!!”」
女優が派手な動作でぶつかって、リノリウムを模した床に教科書が散らばる。
『あっ……』
Aは散らばった教科書と女優を交互に見て、驚いた。こんな反応も言葉も、台本にない。本来なら爽やかに笑って、気をつけて、と言って去る筈だ。セリフを忘れたのか?
『ううんこちらこそ、ごめんね?怪我は?』
「あ、えっと、ない、です……」
『よかった。女の子なんだし、気をつけてね?』
スタジオの空気が変わった。
新人の、初挑戦の演技を“見てやる”空気だったのが、Aの演技で一変した。
台本にないセリフ、動き。でもそれはAの役をより引き立たせる、優れた一手だった。
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watanuki - すばるさん» まだ始まったばかりだけど、採用していただきありがとうございます!もうワクワクが止まらない笑笑 (2019年7月23日 19時) (レス) id: 398ac4b0d3 (このIDを非表示/違反報告)
すばる(プロフ) - watanukiさん» リクエストありがとうございます!女体化楽しそう....! (2019年7月22日 13時) (レス) id: 7eb248740d (このIDを非表示/違反報告)
watanuki - リクエストいいですか?主人公が女体化する内容が見てみたいです(?)。あと、このお話ものすごく楽しませてもらってます!あ、その女体化した時の身長はジミンちゃんくらいがいいです。170近く?まあ超えるくらいがいいです。よろしくお願いします! (2019年7月22日 7時) (レス) id: 398ac4b0d3 (このIDを非表示/違反報告)
すばる(プロフ) - (名前)さん» 早速ありがとうございます!演技のお話考えてみますね!! (2019年7月15日 23時) (レス) id: 345011fa2c (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - やっぱり演技の話見てみたいです! (2019年7月15日 23時) (レス) id: 993ddb6aa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すばる | 作成日時:2019年5月21日 23時