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side:Y.C


伊野尾ちゃんはね。
きっと、いろんなことに臆病すぎるだけなんだ。
だから、俺はそれを、あわよくば優しく包んで、癒してあげたかった。


でもね、それは。
きっと、俺の役目じゃないし、俺にはできないから。

とことん悪者になって、山田くんに、気づいてもらおうと思った。
だから、あの日も、女優さんに頼み込んで、山田くんを呼んでもらって、わざと俺の楽屋の前を通らせた。

きっと傍から見ても本当にバカなくらいバカ真面目な山田くんは、伊野尾ちゃんと話し込むようになるだろうから。


いい方向に、進めただろうか、これで。
また撮影場所が一緒で、たまたますれ違って。


「っ伊野尾ちゃん!」


思わずその腕を掴んだ。


「っあ、ちば、くん、」


伊野尾ちゃんは、メンバーから少し離れたところを、山田くんと2人で歩いていて。
ああ、そっか。


「……よかったね、伊野尾ちゃん。」


そう言って、ずっと掴み続けていたかった伊野尾ちゃんの手を、離した。


戸惑う伊野尾ちゃんは、少し遠いところにいたメンバーの人たちに呼ばれて。


「呼ばれてるよ!行かなきゃ!
ばいばい、またね!」


そう手を振ると、伊野尾ちゃんは、俺の大好きな笑みを浮かべて、手を振った。


「……俺が、ずっと大切にします。」


残った山田くんは、そう言って、みんなのところに歩いていった。


「……意外と本気、だったんだけどなぁ……」


滲む目の前を無視して、伊野尾ちゃんや山田くんに背を向けて1歩を踏み出した。



もう、俺の腕の中になんて、来ちゃダメだよ。

あわよくば優しく包んで、癒してあげたかった。

ああ、あわよくば。
俺が大切にするよって。
俺が伊野尾ちゃんに、言ってあげたかった。

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作者名:酢雨 | 作成日時:2017年6月27日 20時

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